長谷川幸

女性整形外科医から整形外科に興味をもってくれた女性医師に対するメッセージ

(最終更新日 2020年2月1日、文責 長谷川幸 平成17年卒)

【整形外科で女性であることはハンデにならないの?】なりません!

整形外科は大工仕事といわれますが、力任せにやっては患者さんの骨や関節を痛めてしまいます。コツをつかめば軽い力で手足を支えたり、術野を確保したりすることができるので、『女性だから整形外科医は難しい』とはなりません。
患者さんは股関節周囲や腰椎、臀部などを診てもらう際に可能なら同性の医師を希望される場合があります。関節リウマチや変形性股関節症の患者さんには女性が多く、他の先生から診察依頼を受けることもありました。

【専門性について】しっかり会得できます!

名整会には脊椎班、小児班、膝肩班、手の外科、股関節班、リウマチ班、腫瘍班があり、大学だけでなく一般病院でも専門性の高い診療を行っています。また、手術だけでなく、保存的治療、薬物治療や装具、リハビリなども整形外科の治療にとって重要であり、どれも極めていくと面白いものばかりです。若いときから研鑽をしっかり重ねておけば仕事を離れても必ず復帰できます。「手術は自転車のようなもの。しっかり身に着けておけば長期間離れていても、やり始めれば思い出す。」と専攻医のときに上の先生から言われました。私も復帰するときは最初不安でいっぱいでしたが、身についていた専門的なテクニックが少しずつ戻ってくるのを感じました。

【妊娠について】周囲に具体的にきちんと伝えること!

男性医師は妊婦の気持ちや状況がわからないので、具体的に伝えることが大事です。命を育てるということは女性としても、医師としても、大切でかけがえのない経験です。妊娠が分かったときには周囲のDrにサポートしてもらえるよう、まずは相談してください。整形外科は手術などチームで行うことが多いので、自分ができないことは他の先生に頼る、その代わり自分ができることをやるという分業がしやすいと思います。
整形外科医と放射線は切っても切れない関係です。ですが妊娠中の女性にとっては切り離さなくてはいけません。放射線のない診療、放射線のない手術も整形外科にはたくさんあります。こどもは宝であり、守るのは当然です。実際働いている現場ではなかなか言いづらいかもしれませんが、妊娠がわかったら、きちんと自分と赤ちゃんの身を守りましょう。
私は朝のカンファレンスで妊娠を伝えたところ、すかさず同日の手術(脛骨近位端骨折)を他の先生が交代してくれました。妊娠中はイメージの必要な手術をお願いする代わりに、イメージ不要な手術の助手に入ったり、ギプス巻きを率先して行ったりなど自分ができる仕事をしていました。そして体調が良くないときは無理せず、外来診察室のベッドで休むこともしばしばありました。

【出産後の復帰について】我々はあなたの整形外科医を続けたい気持ちを叶えます!

出産の際には必ず仕事から離れなければなりません。そして慣れない育児をしながら復帰前と同じ仕事をすることはとても難しいです。どんな条件なら仕事復帰できるのか、検討した内容を職場や医局に相談してください。「妊娠したらどうしよう…。」ではなく「妊娠したらどうしたい」「出産後の復帰はこうしたい」を医局や周囲に伝えることが重要であり、相談することで環境を整えることができるようになります。
私は第1子妊娠時は三次救急対応の大規模病院で働いていました。復帰後の育児環境を考えると同じ病院での勤務は難しく、医局に相談したところ、自分の実家近くの中規模病院に異動となりました。おかげで育児サポートが得られて仕事に復帰することができました。

【仕事と育児の両立について】一人でがんばりすぎないで!

すべての仕事、すべての育児に言えるのは「自分一人だけで抱えることは良くない」です。周りの人の協力なしではどちらも成り立ちません。逆に言えば、たとえ小さなことでも、あなたが協力してくれることを周囲は望んでいます。まずはできる仕事から始めていきましょう。それでは医師の責務を果たすことはできないと感じる人もいるかもしれません。Dr人生は長いのです。仕事を続けることで得た経験・能力・技術を将来社会に還元できればそれでいいのです。
育児と仕事の両立の具体的な方法は人それぞれ、千差万別です。就業時間がフルタイムか時短か、外来だけか手術だけか両方するのか、当直や休日当番ができるかどうか、緊急時対応(こどもの発熱など)は自分か夫か親族かベビーシッターか、などなど。こんなときにはどう対応すればよいのか、何かよい工夫はないか、困ったときにはぜひご相談ください。先輩Drたちからの経験豊富なアドバイスをたっぷり提供します。

【キャリア形成について】大学院入学、Welcomeです!

高い専門的知識や技術を会得したければ大学院への入学をおススメします。最先端の医療や研究に関わることで、臨床だけでは感じることができなかったさらなる医学への興味を高めることができます。また、専門性を高めることは医師としての責務を果たす力を身につけることにもつながります。
妊娠・出産のタイミングに重なっても大丈夫です。私は大学院に入学してから第2子を妊娠しました。休学の期間は悩みましたが周囲のサポートが厚かったので3か月で復帰しました。正直復帰直後はいろいろ大変でしたが、半年くらいは慣らし運転のつもりで研究していました。基礎研究は自分のペースで実験することができたのでよかったなと思いました。

【最後に】一緒に整形外科の魅力にはまりましょう!

『女性だからできない』なんてことはありません。私は多くの先輩、後輩のDrを見てきましたが、みなさんやりたいことをしながら充実した生活を送っています。専門性を極めるDr、患者さんに寄り添うことをモットーとしているDr、研究に勤しむDr、仕事だけでなく趣味も楽しむDrなどなど。仕事と家庭、プライベートの両立に悩むのは女性も男性も同じです。過去のDrの方法は参考にはなりますが、模範解答ではありません。これからは専攻医の先生たちが自分たちに合った方法をみつけてもらえばよいと思います。
女性はどうしても仕事から離れなければならない時期が生じますが、その時期の前にしっかりと経験・知識を積み重ね、整形外科の楽しさを感じてください。離れることで整形外科の魅力をより感じることになり、復帰したら整形外科のすばらしき世界の虜になると思います。一緒に働けることを楽しみにしています。