保険適応のある医療材料を用いた温熱刺激による新規骨形成促進法

ポイント

本研究ではラット、ウサギ骨欠損モデルを作成し、保険適応のある医療材料を使用した45度15分、週一回の温熱刺激が骨形成促進効果を持つことを明らかにしました。温熱刺激はまた、MC3T3細胞株においてアルカリフォスファターゼの発現を促進しました。これらの結果は適切な温熱刺激が骨芽細胞を介して骨形成を促進すると考えられました。

1.背景

骨腫瘍切除後や骨折後、また慢性の骨髄炎などの結果生じる骨欠損の治療には、骨伝導と早期の骨形成が得られることから自家骨移植が広く使用されています。しかし自家骨の採取が困難な場合もあり、骨形成を促進するための効果的な新しい方法が求められています。温熱治療は以前から炎症性疾患や転移性腫瘍で用いられている治療ですが、ヒト間葉系幹細胞やいくつかの細胞株を用いた基礎実験において温熱刺激が骨芽細胞を活性化させアルカリフォスファターゼ活性を上昇し、骨形成マーカーを上昇させるという報告が散見されています。しかしながら動物モデルにおいて温熱刺激による骨形成を評価した報告は稀で、ヒトでの使用が認められている材料を用いた報告はありません。

2.研究成果

我々はラットおよびウサギ動物モデルに対して保険適応のある医療材料を使用して45度15分の温熱刺激を行い、週一回の温熱治療群が対照群と比較して有意な骨形成促進効果を持つことを発見しました。一方で、週三回の頻回な温熱刺激は骨形成を促進しませんでした。組織学的所見においても週一回の温熱治療群では対照群と比較して治療開始から2週、4週時点で有意な骨形成が生じており、骨形成は辺縁から中心に向かって生じていました。また週一回加温群においてはより多くの破骨細胞が観察された。温熱刺激はMC3T3細胞株において有意にALP発現を亢進させたが、ATDC5では明らかな分化の促進を示しませんでした。

ラット骨欠損モデルにおける温熱治療による新規骨形成
(A)-(E) マイクロCTにおいて週一回加温群はコントロール群と比較して温熱治療開始2週時点、4週時点とも骨形成が促進されており、またBone volume(骨形成量)とBMD(骨密度)は有意に高値を示しました。週3回加温群は有意な骨形成を示さず、治療開始4週での骨密度は有意に低値を示しました。

(A)-(C)ウサギによるマイクロCT及び組織学的評価による治療開始後4週時点での骨形成促進効果
ラットと同様にマイクロCTにおいて温熱治療開始後4週時点で有意な骨形成促進効果が確認されました。
(D)-(E) 石灰化骨が緑、未石灰化骨が赤で示されるVillanuevaの骨染色においても、緑で示される石灰化骨は有意に温熱治療群で増加していました。

3.今後の展開

これらの結果により保険適応のある材料(リゾビスト®、リジェノス®)を使用した複数の動物種による骨欠損モデルに対して、温熱刺激による骨形成促進効果が確認されました。また、明らかな副作用は認められませんでした。適切な温熱刺激は骨形成を促進させると考えられるため、近い将来温熱治療が、骨欠損を生じた患者さんに対する骨形成促進を目的とした有効な選択肢となる可能性が示唆されました。

4.用語説明

  • リゾビスト®:富士フィルムRIファーマが発売している鉄成分を含むMRI用肝臓造影剤。
  • リジェノス®:クラレが発売しているハイドロキシアパタイト人工骨。
    配向連通孔構造という特徴を持つ。
  • 交番磁場:時間と共に大きさと方向が変化を繰り返す磁場を指す。鉄成分が磁場内にあると発熱する。
  • Micro-CT:マウスやラット等の小動物を対象とした分解能の高いCT(computed tomography)
  • MC3T3:マウス頭蓋間由来の細胞株。骨芽細胞を介して骨へ分化する
  • ATDC5:マウス奇形腫由来の細胞株。軟骨細胞分化を介して骨へ分化する

5.発表雑誌

Takehiro Ota1, Yoshihiro Nishida1, Kunihiro Ikuta1, Ryuji Kato, Eiji Kozawa1, Shunsuke Hamada1, Tomohisa Sakai1, Naoki Ishiguro. Heat-stimuli-enhanced osteogenesis using clinically available biomaterials. PLoS One. 2017 Jul 18;12(7):e0181404.