留学記 –Califronia, San Diego➖

【氏名】伊藤研悠 (平成16年卒)【所属】脊椎班/San Diego Spine Foundation, Scripps Green Hospital, Rady Children’s Hospital

 2018年4月より1年間サンディエゴに留学の機会をいただきました。
サンディエゴはカリフォルニア州最南端でメキシコに面する都市です。そのため移民が多く随所に寛容性を感じます。気候もカリフォルニア沖の寒流のため沿岸部は夏でも涼しく過ごしやすいです。しかし海は冷たいとのことで足を踏み入れておりません(サーファーはたくさんいるとのことですが気合なのでしょうか)。自然も多く家の前の公園ではウサギ、リス、モグラが出没します。難点としましては米軍基地が多い(映画トップガンの撮影地です)こともあり、ときおり爆音で戦闘機が飛んでビックリします。また砂漠に強引にスプリンクラーで緑を作った街でもあり、カリフォルニア北部では山火事が発生しています。さらに南部のメキシコ国境付近のティファナには難民キャラバンが押し寄せトランプは警備を強めています。世界で一番行き来が多いborderだそうですが一時封鎖されたとのことです。南北をこのような状況が取り巻いていますがニュースでみるだけで住んでいる周辺はとても平和です。立派なconvention centerもあり皆様も学会で訪れる機会があるかと思います。
<英語や文化>
 自分の英語力は上達していないがカリフォルニア特有(と自分は思います)なものは身についたと感じます。How are you?と言われたらGoo, goo, gooと陽気に連呼する。なんならHow are youは不要でHi (はあ〜い↑)と陽気にいえば十分である。Have a good dayでもよいがHave a good one!と陽気にさよならする。基本的に笑顔と陽気さが大切で患者−医師間も同じノリです。患者さんとは最初と最後にhug or shake handsをする。エレベーターに乗っても、UBERに乗ってもとにかく会話を多くする。密閉空間において沈黙はむしろ失礼で怪しい人物と思われる(個人的感想です)。困っている人がいれば助けてくれます。重いものを運んでいると長い距離を一緒に運んでくれる。ドアは最初に開けた人が最後まで開けて皆を通す。車は交差点で必ず譲り合いになる。これらのことは文化というレベルで自然に皆がする。帰国しても続けて行きたいと思います(hugはまだ日本ではやめておきます)。
<San Diego Spine Foundation (SDSF)>
 サンディエゴの多数ある病院の中で脊椎をやっているScripps Green Hospital, Rady Children’s Hospital, University of California San Diego (UCSD)でSDSFを形成しています。Early onset scoliosisに対しdouble growing rodを開発したAkbarnia先生を中心とした組織で、リサーチャー、統計学者も在籍しアメリカの脊椎手術データを集積しています。データを提出すると即日に統計結果が返ってくるのでびっくりします(図1)。さらに小児側弯の大御所であるPeter Newton先生やYaszay先生などlegendsが多く在籍し興奮を隠せません(図2)。革新的な組織でgrowing rodを磁石で伸ばせるようにしたmagnetically controlled growing rod(MCGR)を開発し改良を重ねています(図3)。米国ではgrowth-sparing surgeryはほぼMCGRとなってきています。ただMCGR rod一本で1700$しますので2本いれると340万円以上します。日本では今後どのようにしていくのか議論が必要です。また、近年日本でも盛んに行われるlateral lumbar interbody fusion(LLIF)のメッカでもありSociety of Lateral Access Surgery (SOLAS)の中心人物であるEastlack先生とMundis先生も在籍しています。本年度のSOLAS annual meetingはサンディエゴで行われ、同門から江南厚生病院の金村先生・中島先生・大内田先生が参加されました。江南厚生病院からの発表が一番話題になっていました。
 日常としましては朝6時半からカンファレンスが始まります。たまに6時からということもあります。7時半には手術が始まります。皆タフで飄々と仕事をこなしていきます。一部の先生ではありますが金曜になると週の最後を祝うべくディスコボールを点灯し音楽も大音量とします。また抄読会なども食事をしながら行っています。誤解のないように言いますと皆すごく一生懸命で真面目です。少しでも楽しく場の雰囲気をよくしようという気持ちが伝わってきます。これぞ働き方改革と言うべきでしょうか。
 有り難いことにSDSFから色々なカダバーセミナーに無料で招待してくれました。近場の牧場にオペ室があり、牛を使ったwet labで胸腔鏡による胸椎前方側弯矯正のトレーニングもありました。少々牧場のニオイが気にはなりましたが(図4)。このようにサンディエゴという街で組織的に動いていることが印象的です。しかしこれは移民などが低賃金で重労働を担ってくれているおかげで成り立つものであり、貧富の差など社会的問題があることも忘れず感謝しなければなりません。
<研究>
 自分の研究に関してですが、毎週火曜早朝カンファで議論をする、テーマを考えproposalを作成、これがアメリカ中のstudy group memberに配布されapprovalを待つということから始まります。何個かテーマを出してようやくapprovalされます。Approvalを得てもデータが触れるまでに3ヶ月程settingに要します。Settingを待っている間に頚椎前方アプローチの既存データで論文を一つ書かせてもらいました。Second authorということで少々残念ではありましたが形に残せたことが嬉しいですし、また勉強になりました。そうこうしているとsettingが終了したようで、Growing rodのsagittal balance長期経過をgrowing spine study group(GSSG)に、pelvic retroversionに対するlong fusionの成績が international spine study group(ISSG)にapprovalされ、レントゲン計測とデータ収集に励んでいます。さらにLLIF合併症の定義というevidenceで得にくいものに対し、consensusを得ることで解決するということを主導で行っております。これはガイドラインを作ることに似ています。Delphi法という手法で世界各国20数名の医師に意見を求めるというものです。自分は不慣れな手法ですがチームに統計学者もおりアドバイスをすぐにもらえます。システマティックに協力しあえる体制が整えられており、外科医はなるべく診療に集中できるようになっています。
<留学に関する周辺事情>
 サンディエゴ周辺しかわかりませんが、治安がとてもよく家族も安心です。公立小学校は無料です。予防接種さえうけていればサクッと入学できます。日本人もいますのでママ友もすぐでき情報もいただけます。公文もあり日本語勉強も心配ありません。幼稚園はたくさんありますが空きがなく、9月の新学期まで待つ家庭もありました。我が家はなんとかシナゴーグに併設されるユダヤ系preschoolに入れました。Jewishは皆穏やかさの中に凛とした姿勢があり親しみやすいです。個人的には杉原千畝が通った瑞陵高校が近所でしたのでユダヤ人に親しみが元よりありましたし、名古屋では滅多に会えない方々なので貴重な経験ができています。したがって我が家ではクリスマスだけでなくハヌカ(ユダヤの祭り)もお祝いしました。これでいいのかと自問自答していましたが広く受け入れる日本人の多様性が素晴らしいのだと納得させていました。またストレス発散の運動に関してはマンションには大抵ジムがありますし、高校や大学のテニスコートは週末開放されます。街全体で施設を有効利用できるようにしています。UCSD, Scripps研究所と有名研究機関も多くあり、日本からの整形外科医が現在12名みえます。数ヶ月に一度サンディエゴ日本人整形外科医会として交流をしています。このような繋がりは留学で得られる大きな財産の一つです。留学先で悩んでいる方はサンディエゴを候補の一つにいかがでしょうか。
 最後になりましたが貴重な機会を与えていただいた関係する諸先生方に心より感謝を申し上げます。