Huntsman Cancer Institute, University of Utahに留学して その2 ~この一年を振り返って

【氏名】新井 英介(平成13年卒)【所属】腫瘍班/Huntsman Cancer Institute, University of Utah

月日が経つのは早いもので、住居も決めずにトランク3個とスマホのみでソルトレイクにやってきて1年が過ぎました。これが出版されるころには1年半近く経過しています。光栄なことに今年も名整会会誌に出稿する機会を頂きましたので、この一年を雑記的に振り返りたいと思います。

一般

コミュニケーション:概して上達の気配なし。雰囲気で喋っていることをなんとなく掴んでわからないことは聞き流すという、ある意味問題となる能力と、きれいに喋られなくても、自分の意見を無理やり伝える面の皮の厚さは増した。アメリカ人は、「I’m fine, thank you. And you?」とは言わないことを知る(多くは、「アイム具ッー」あるいは「具ッ」、たまに「動員グレイ」、「納豆別ッ」など)。「Do number two」「Drop the kids off at the pool」などのごく一部の偏ったスラングを習得。娘(4歳)は一見英語が上達した風で、テレビでは英語の番組も見ていたが、6月から8月終わりまでの長い夏休みでまた元に戻ってきた。今のお気に入りの主題歌の最後「プリキュア~」の最後が巻き舌になる。一部の発音だけ、お土産となりそうである。

食生活:ピザでもハンバーガーでもいいので、日本のものが恋しい。サラダにイチゴやスイカは入れないで欲しい。砂糖の塊の様なお菓子類とSugar Free、Gluten Free、Fat Freeが両極端。Freeとはいえなんとなく体に悪そうな味。帰国したらその日のうちに回転すしに行くと決めている。

交通:3時間のドライブを「近い」、高速道路で120㎞/hを「普通」と考えるようになる。

交友:BBQ、プレイデイト、誕生日会などが兎に角多い。日本人以外の時はイベントごとにぐったり疲れる。娘よ、脳みそフル活用、全神経を集中させて会話している最中に声をかけないでくれ。

宗教:モルモン教の友人家族には良くしていただき大変お世話になっている。今のところ改宗することはないが、寄付はしておこうか。

旅行/レジャー
551-1
Figure 1. Bryce Canyon
551-2
Figure 2. Salt Lake Flat

Zion国立公園及びBryce Canyon国立公園:初めての遠出。Zionは見上げる、Bryceは見下ろす。特にBの方は、日本ではあまり有名ではないがここにしかない異様な光景に出会える(Figure 1)。2泊。

Bonneville Salt Lake Flat:塩で出来た砂漠。ひたすら何もなく、音も吸収される静かな場所。スピードカーコンテストや映画撮影が行われる(Figure 2)。

551-1
Figure 3.
Las Vegas with bad guys
551-4
Figure 4. Capitol Reef

Las Vegas:前日に思い付きで計画、現地友人に家族ごと7時間、運んでもらう。友人の従弟の家に4泊。街では娘が、悪いディズニーキャラクターと写真を撮り、あとで金を要求される(Figure 3)。

Capitol Reef国立公園:比較的地味な国立公園といわれるが、うまくまとまっている(Figure 4)。道中の風景もきれいだが車にはねられた小動物、鹿が路上に転がる(road kill)こと極めて多し。2泊。

551-5
Figure 5. Canyonland

Calgary (Canada), Banff国立公園:膝肩班O野をはじめとした悪友と合計4家族で集結。O野家にて3泊、ホテル・テントで2泊。お世話になりました。Visaが期限切れ(30日以内、あるいはカナダ・メキシコなら問題なし)であり、ルールを知らない入国管理官に日本に帰されそうになる。

Yellowstone国立公園:現地友人と共に4泊。広い。火山、硫化水素、間欠泉、湖、渓谷、滝、草原、動物。何でもあり。

Arches国立公園及びCanyonland国立公園:前者はユタ州のシンボルであるDelicate Archなど。後者はGrand Canyonの小型版(Figure 5)。2泊。

その他にもユタには、国立公園を上回るような素晴らしい州立公園も多数あるが、これらを国立公園に格上げすることでユタ州の裁量で整備ができなくなることを恐れ、住民の反対により州立にとどめているとのユタ住人の証言あり。

Disney World:しっかり行こうとするとお金がかかりすぎるという理由で断念。同じ金額で日本のDisney Resortに3回以上行けるため、「帰国後、国内で複数回行く」と一見達成可能な約束を家族と行い決着。

スキー:ソルトレイク界隈は世界最高の雪として知られる。冬の間は週末の度、スキーに行った。筑紫聡先生(愛知県がんセンター中央病院)をはじめとした日本からのゲストとも一緒に楽しんだが、山頂部は富士山頂よりも標高が高くなるためか、高山病になることしばしば。また、同僚のOrthopedic Clinical FellowがSegond骨折を受傷、ボスのRandall教授もACL断裂、膝蓋靭帯断裂の既往があり、ユタの留学では膝を痛めるという風評被害を防ぐべく、細心の注意を払うように念を押されている。

プール:夏場は9時ころでも明るいため、仕事の後にマンションのプールを楽しむ。マンション住人に声をかけられるが半分以上は理解できず、娘と遊ぶことだけに集中するフリをする。温水プール浴では日本のお風呂を思い出す。プールからは水着、裸足のままエレベーターに乗って家に戻る。

研究/仕事

感謝:まず初めに、研究のために血液を提供してくれた名古屋大学の整形外科及び手の外科の方々に心より深謝申し上げます。これらのサンプルは、日本人のEwing肉腫発症に関与する遺伝子背景を調査するためのプロセスを経ているところです。

既存の研究(上述):標的の範囲が広げられたために、実験系を新たに組みなおすことになり悪戦苦闘中。

551-6
Figure 6. Air quotes

新規研究:肉腫患者の体細胞からiPS細胞を作成する研究がゼロより開始。計画段階でコンビの相方であったポスドクの既往のEwing肉腫が再発し、脱落する。この原稿を書いている現在、iPS細胞の作成はできたがその均等化、評価についてやはり悪戦苦闘中。

プレゼン:約3ヶ月に1回、30分ほどのプレゼンを行っている。カンペを読まずにプレゼンしようとすると冗長になりすぎるため、カンペを読みながらもメリハリはつけて、簡便でコンパクトなプレゼンを心がける。安定したフリートークはできない。プレゼン中、Air quotes(Figure 6)ができるようになるのが目標。

臨床:臨床カンファレンスには出席しているが、手術はいくつか見学に入る程度。正直、手術が恋しい。

まとめ

以上、まとまりはなく一年を振り返りました。セクションごとの割かれた文字数の割合が、自分がユタで経験した事柄を物語っています。あと半年、どこまで成果が出せるかはわかりませんが、与えられた機会を生かし良い経験を積んでゆきたいと思います。