2021年1月21日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示と西知多総合病院から2題の講演がありました。
(文責:森下 和明、大石 遼太郎)
日時:2021年1月21日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 安藤 圭 先生
症例提示
症例1 左大腿骨骨幹部に発生したBrodie膿瘍の1例
県立多治見病院 村瀬 史典 先生
左大腿部痛、膝関節の可動域制限を主訴にしたBrodie膿瘍の1例を経験した。Brodie膿瘍は比較的境界明瞭な骨透亮像で辺縁骨硬化を伴うことが特徴とされ、骨腫瘍との鑑別が必要となる場合がある。自験例では、骨皮質の透亮像と骨皮質の肥厚や骨膜反応が見られ、骨形成腫瘍との鑑別を要した。
症例2 頸髄損傷に対して頸椎後方固定術を施行したことにより嚥下障害が生じた一例
中部労災病院 岩田 愛斗 先生
DISHに併発したC6骨折に伴う脊髄損傷に対して、後方除圧固定術を行った1例を経験した。術後嚥下障害の出現を認めた。保存的に改善を認めなかったため、C4/5の骨棘切除を施行し、改善を認めた。DISHと前方骨棘を伴う頚椎に対して、後方固定術を行う場合には、術後に嚥下障害を認める可能性が示唆された。
症例3 外科的治療を要した後頭骨環軸椎回旋位固定の一例
碧南市民病院 斎藤 雄馬 先生
流行性耳下腺炎を契機に、後頭骨環軸椎回旋位固定(Fielding分類TypeⅡ)を認めた一例を経験した。O-C1関節の癒合とC1の低形成を認め、保存治療では一時的な改善しか得られなかったため、C1の低形成を考慮しO-C2固定を施行し良好な経過を得た。
症例4 糖尿病性Charcot足に足関節固定を行った一例
静岡済生会総合病院 野村 貴紀 先生
糖尿病性Charcot足に対して、プレートによる足関節固定術を行った一例を経験した。遠位脛腓関節の安定性、距腿関節以外の正常な関節を温存するという観点から、髄内釘ではなく、Masquelet法を用いた2期的手術によるプレート固定を選択した。現在術後経過観察中ではあるが、皮膚トラブルや、整復位の損失はなく経過している。
演題① 膝関節滑膜ひだ障害の小経験
西知多総合病院 樋田 大輔 先生
滑膜ヒダには膝蓋上、内側、外側、膝蓋下の4種類がある。胎生期の遺残正常組織であり、生理的な状態では疼痛の原因となることはないが、損傷や、瘢痕化に伴い病的な状態となり、疼痛の原因となる。基本は保存治療(局所安静、大腿四頭筋・ハムストリングス・腸脛靭帯・腸腰筋のストレッチ、足底板、関節注射など)であるが、症状経過によって手術加療を選択する。
演題② 診たくないけど放置できない手の感染症
西知多総合病院 浦野 秀樹 先生
手部感染症は機能障害を生ずる可能性が高く注意を要する。化膿性腱鞘炎はKanavelの4徴で診断するが、4徴が揃わないことも多い。腱鞘に沿った圧痛、指の紡錘状の腫脹は感度が高いとされる。抗生剤開始後12-24時間以内に改善傾向を認めなければ、手術療法を検討する報告もあるが、疑った場合には可及的速やかな緊急デブリードマンが望まれる。手部感染症を疑う場合には、時期を逸することなく、可及的早期の手術加療に望む心構えが必要である。