女性医師へのメッセージ

整形外科の医師は95%が男性です。今後の整形外科は単に力仕事で長時間労働であった時代は終わり、女性医師の活躍がますます期待されています。名古屋大学は日本整形外科学会男女共同参画委員会アドバイザーの堀井恵美子先生をはじめとして多くの女性医師が活躍されています。出産・育児と自分のキャリアとの両立について現在勤務医として働いている女性医師からのメッセージです

女性整形外科医から整形外科に興味をもってくれた女性医師に対するメッセージ その1

【整形外科で女性であることはハンデにならないの?】

【なりません!】
整形外科は大工仕事といわれますが、力任せにやっては患者さんの骨や関節を痛めてしまいます。コツをつかめば軽い力で手足を支えたり、術野を確保したりすることができるので、『女性だから整形外科医は難しい』とはなりません。
患者さんは股関節周囲や腰椎、臀部などを診てもらう際に可能なら同性の医師を希望される場合があります。関節リウマチや変形性股関節症の患者さんには女性が多く、他の先生から診察依頼を受けることもありました。

【専門性について】

【しっかり会得できます!】
名整会には脊椎班、小児班、膝肩班、手の外科、股関節班、リウマチ班、腫瘍班があり、大学だけでなく一般病院でも専門性の高い診療を行っています。また、手術だけでなく、保存的治療、薬物治療や装具、リハビリなども整形外科の治療にとって重要であり、どれも極めていくと面白いものばかりです。若いときから研鑽をしっかり重ねておけば仕事を離れても必ず復帰できます。「手術は自転車のようなもの。しっかり身に着けておけば長期間離れていても、やり始めれば思い出す。」と専攻医のときに上の先生から言われました。私も復帰するときは最初不安でいっぱいでしたが、身についていた専門的なテクニックが少しずつ戻ってくるのを感じました。

【妊娠について】

【周囲に具体的にきちんと伝えること!】
男性医師は妊婦の気持ちや状況がわからないので、具体的に伝えることが大事です。命を育てるということは女性としても、医師としても、大切でかけがえのない経験です。妊娠が分かったときには周囲のDrにサポートしてもらえるよう、まずは相談してください。整形外科は手術などチームで行うことが多いので、自分ができないことは他の先生に頼る、その代わり自分ができることをやるという分業がしやすいと思います。
整形外科医と放射線は切っても切れない関係です。ですが妊娠中の女性にとっては切り離さなくてはいけません。放射線のない診療、放射線のない手術も整形外科にはたくさんあります。こどもは宝であり、守るのは当然です。実際働いている現場ではなかなか言いづらいかもしれませんが、妊娠がわかったら、きちんと自分と赤ちゃんの身を守りましょう。
私は朝のカンファレンスで妊娠を伝えたところ、すかさず同日の手術(脛骨近位端骨折)を他の先生が交代してくれました。妊娠中はイメージの必要な手術をお願いする代わりに、イメージ不要な手術の助手に入ったり、ギプス巻きを率先して行ったりなど自分ができる仕事をしていました。そして体調が良くないときは無理せず、外来診察室のベッドで休むこともしばしばありました。

【出産後の復帰について】

【我々はあなたの整形外科医を続けたい気持ちを叶えます!】
出産の際には必ず仕事から離れなければなりません。そして慣れない育児をしながら復帰前と同じ仕事をすることはとても難しいです。どんな条件なら仕事復帰できるのか、検討した内容を職場や医局に相談してください。「妊娠したらどうしよう…。」ではなく「妊娠したらどうしたい」「出産後の復帰はこうしたい」を医局や周囲に伝えることが重要であり、相談することで環境を整えることができるようになります。
私は第1子妊娠時は三次救急対応の大規模病院で働いていました。復帰後の育児環境を考えると同じ病院での勤務は難しく、医局に相談したところ、自分の実家近くの中規模病院に異動となりました。おかげで育児サポートが得られて仕事に復帰することができました。

【仕事と育児の両立について】

【一人でがんばりすぎないで!】
すべての仕事、すべての育児に言えるのは「自分一人だけで抱えることは良くない」です。周りの人の協力なしではどちらも成り立ちません。逆に言えば、たとえ小さなことでも、あなたが協力してくれることを周囲は望んでいます。まずはできる仕事から始めていきましょう。それでは医師の責務を果たすことはできないと感じる人もいるかもしれません。Dr人生は長いのです。仕事を続けることで得た経験・能力・技術を将来社会に還元できればそれでいいのです。
育児と仕事の両立の具体的な方法は人それぞれ、千差万別です。就業時間がフルタイムか時短か、外来だけか手術だけか両方するのか、当直や休日当番ができるかどうか、緊急時対応(こどもの発熱など)は自分か夫か親族かベビーシッターか、などなど。こんなときにはどう対応すればよいのか、何かよい工夫はないか、困ったときにはぜひご相談ください。先輩Drたちからの経験豊富なアドバイスをたっぷり提供します。

【キャリア形成について】

【一緒に整形外科の魅力にはまりましょう!】
『女性だからできない』なんてことはありません。私は多くの先輩、後輩のDrを見てきましたが、みなさんやりたいことをしながら充実した生活を送っています。専門性を極めるDr、患者さんに寄り添うことをモットーとしているDr、研究に勤しむDr、仕事だけでなく趣味も楽しむDrなどなど。仕事と家庭、プライベートの両立に悩むのは女性も男性も同じです。過去のDrの方法は参考にはなりますが、模範解答ではありません。これからは専攻医の先生たちが自分たちに合った方法をみつけてもらえばよいと思います。
女性はどうしても仕事から離れなければならない時期が生じますが、その時期の前にしっかりと経験・知識を積み重ね、整形外科の楽しさを感じてください。離れることで整形外科の魅力をより感じることになり、復帰したら整形外科のすばらしき世界の虜になると思います。一緒に働けることを楽しみにしています。

女性整形外科医から整形外科に興味をもってくれた女性医師に対するメッセージ その2

【整形外科を目指したきっかけ】

 幼少期よりクラシックバレエを習っていたのですが、どの関節や筋肉をどのように動かしたらいいのか、ということに興味がありました。学生時代から整形外科を考えていたものの、整形外科は男性社会で手術も大工仕事で力が必要…という印象だったため、初期研修医時代は進路で悩みました。最終的には体を動かすことが好きな自分には合っているかなと思い、整形外科へ進むことにしました。

【実際に働いてみて】

 市中病院勤務時代は忙しい中にも日々学ぶことが多く、非常に充実していました。他科と比較すると脱臼整復や手術での足持ちなど、力の必要なことは確かに多いのですが、上司や同期のサポートも手厚く、女性であるからといって不利になることはほとんどありませんでした。また外来では女性医師希望の患者さんが結構いらっしゃいます。変形性関節症や関節リウマチの患者さんは圧倒的に女性の方が多いです。

【名古屋大学整形外科について】

 同期入局者が非常に多いです。私たちの代は19人の入局者で、そのうち4人が女性でした。全国的に整形外科の女性医師の割合はかなり低いと思いますが、名大では女性医師の先輩方がたくさんいらっしゃいます。専門分野も多く、脊椎班、小児班、膝肩班、手の外科、股関節班、リウマチ班、腫瘍班と各分野で多くの先生方がご活躍されています。現在私の所属しているリハビリテーション科は2018年5月に診療科として独立しました。大学ではリハビリテーション科として勤務し、外病院で整形外科の外来をメインで勉強させていただいています。

【結婚、出産、子育てとの両立について】

 現在1歳半の娘の子育てに奮闘中です。妊娠中も私の場合は体調も比較的安定していたため、先生方にご指導を受けながら、学会発表にも意欲的に取り組むことができました。育休後、娘を保育園へ預けることになったのですが、初めは発熱や体調不良で休んだり、勤務中に保育園から呼ばれて迎えにいったりすることもしばしばありました。職場の上司・スタッフの温かいサポートのおかげで、ここまでこられています。

【進路で悩んでいる女性医師のみなさんへ】

キャリア、結婚、出産など前述の通り悩みますよね。出産は女性にしかできませんが、キャリアや家庭との両立に悩むのは男性も女性も同じなのではないでしょうか。妊娠・出産後一旦仕事から離れる時期もありますが、働き方はいくらでもあります。そして何より整形外科は体育会系の先生方が多く楽しいです! ご興味のある方はぜひ見学においでください。お待ちしております。