5月の合同カンファレンスの報告

2021年5月13日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示と愛知県医療療育総合センターから2題の講演がありました。

(文責:加藤大策、岡本昌典)


日時:2021年5月13日(木)18:30~

場所:Web開催

司会:名古屋大学 高橋 伸典 先生

 

症例提示

症例1 腰部脊髄くも膜嚢胞に対して経皮的シャント作成術を施行し症状の改善を得た一例

名古屋第二赤十字病院 告野 英利 先生

左下肢痛を認める腰部脊髄くも膜嚢胞に対して手関節鏡を用いて内視鏡下にシャント形成術を施行した症例を経験した。術後は左下肢痛消失し、再発は認めない。嚢胞内が減圧されたため、神経根症状の改善したと考えた。

 

症例2 両大腿骨近位部骨萎縮像から低ゴナドトロピン性男性性腺機能低下症の診断に至った一例

岐阜県立多治見病院 須藤 祥人 先生

右股関節痛を主訴に受診し、両大腿骨近位部に骨萎縮を認め、骨密度が低下した症例を経験したあ。血中ホルモン検査の結果、低ゴナドトロピン性性腺機能低下の診断に至った。成人男性の骨萎縮所見を認めた際に続発性骨粗鬆症の原因として性腺機能低下症が鑑別に挙がる。

 

症例3 足関節果部骨折に対し術中CTを用いた治療経験

名古屋大学 柴田 隆太郎 先生

足関節果部骨折の手術治療において骨接合後に術中CTで脛腓間の評価を行った3症例を経験した。術中CT検査では、単純X線検査では評価困難な遠位脛腓関節の適合性の評価が可能であり、再現性も高く有用である。

 

症例4 Mycobacterium avium complex(MAC)による膝単関節炎と疑われた一例

名古屋医療センター 生田 健 先生

右膝の滑膜炎所見、CRP上昇のため、血清陰性関節リウマチとしてMTX治療されたが奏功しなかった。MAC抗体陽性、MAC抗体濃度上昇を認めたが、抗酸菌培養、組織診は陰性であった。確定診断には至らなかったが、MAC関節炎としてエタンブトール、クラリスロマイシン、リファンピシンの3剤併用療法を開始したところ軽快した。

 

演題1 整形外科医の痙縮治療

愛知県医療療育総合センター  長谷川 幸 先生

痙縮に対して、薬物療法、ボツリヌス療法、バクロフェン髄注(ITB)、整形外科的手術を行っている。ボツリヌス療法は筋注し緊張を和らげる。効果持続は3,4か月である。ITBはバクロフェンを髄腔内に持続投与し痙縮を抑制する。ITB施行症例では介護のしやすさや睡眠の改善が得られた。症例ごとに治療方法を選択し、併用療法を行う。

 

演題2 小児リハビリテーションの不思議な世界と医療療育総合センターのスマートホスピタル計画

愛知県医療療育総合センター 門野 泉 先生

小児リハビリテーションの特徴として、①何をやっているのかがわかりにくい、②組織構造がやや複雑、業界全体がカオスっぽい、ことが挙げられる。解決策として、スマートホスピタル構想がある。『このはネット』というものが、4月から運用されており、本人/家族と多職種支援チームのあいだでのオンライン診療、電子連絡帳が内容となっている。