岸本 賢治/リウマチ班/信州大学/平成21年卒
専攻医から見た名古屋大学整形外科の専門研修について
研修医時代の体験
私は長野県の信州大学を卒業後、2年間、初期研修医として名古屋の病院で研修をしました。初期研修後は学生の時から志望していた整形外科に入局し、初期研修と同じ、名大整形外科の関連病院で整形外科医として研鑽を積みました。若手整形外科医のメインの仕事は外傷治療になります。外傷治療と一言でいっても、小児の上腕骨顆上骨折から高齢者の大腿骨頸部骨折、高エネルギー外傷で受傷した多発骨折など様々です。整形外科医になって驚いたことは、整形外科医になりたての頃から、自分の当番の日にきた外傷患者は重症患者でも主治医を任され、手術の執刀をすることです。はじめのうちは手術に対して不安な気持ちが大きかったですが、上司の先生に助けてもらいながら、経験を積み、患者さんが回復していく姿をみると自分の治療に少しずつ自信がもてるようになりました。研修医時代は多忙な毎日でしたが、上司や同僚の先生に恵まれ、充実した研修生活を送ることができました。貴重な経験ができただけでなく、医師としての心得や仕事に対する姿勢など、整形外科医としての基本を教わることができました。
名大整形外科の魅力
名大整形外科は日本でも有数の医局員が在籍し、様々な分野で活躍されているSpecialistの先生方がたくさんいらっしゃいます。私は名古屋大学に帰局するまでの7年間、3つの関連病院で勤務してきました。若手整形外科医としての働いた7年間で、脊椎、手の外科、股関節、膝肩、リウマチ、小児、腫瘍とそれぞれの分野のSpecialistの先生方と一緒に仕事をさせていただく機会がありました。
整形外科医は、より専門性の高い医療を提供できるSpecialistとしての役割と、幅広い分野に知識・スキルをもつGeneralistとしての役割が社会から求められています。整形外科医になってからの数年間は、まずGeneralistとして研鑽を積むことになります。Generalistとして出来ることは、まず目の前の患者さんを適切に診断し、専門性の高い治療が必要な場合はSpecialistへ治療のバトンを繋いでいくことです。私の考えるGeneralistとしての一番のスキルアップ法はSpecialistに直接、指導してもらうことです。私はSpecialistの先生方から知識や技術だけでなく、その分野ならではのこだわりや面白さを教えていただき、より整形外科という仕事に魅力をもてるようになりました。多くのSpecialistの先生方と働けたことは私にとってかけがえのない時間で、名大整形外科に入局したことでこのような経験を積むことができたと思います。
大学院での研究生活
現在、私は大学院生として基礎研究に取り組んでいます。関節リウマチに関連した研究を行っており、滑膜細胞や実験用のマウスを用いて、関節リウマチの発症機序に関する研究や新しい薬の効果検証などの実験をしています。
整形外科医になったばかりの頃は基礎研究に対してあまり興味を持てずにいましたが、臨床の現場で働いているうちに、より専門的な知識を身につけたいと思うようになり、大学院生として大学に帰局しました。私の考える大学院生の使命は、研究から新しいエビデンスを生み出し、社会に発信していくことです。現代はエビデンスに基づいた医療を行うことが大切です。先人達が築いてきたエビデンスは、臨床の現場でどのように診断や治療を行ったらよいか迷ったときの道標になってくれます。そのエビデンスの多くは基礎研究や臨床研究を通して生み出されたものです。自分の研究が医学の発展につながっていくと思うと、アカデミックな視点から整形外科という学問をより深く知ろうと思うようになり、研究へのモチベーションになっています。研究に没頭できる時間は整形外科医として働く時間の一部ですが、整形外科という学問を深く学べる貴重な時間であり、今の経験が将来的に臨床の場に戻った時も活きてくると思います。
後輩の皆さんへ
学生、研修医の皆さんはこれから数ある科の中から自分の進む道を決めていくことになります。自分が生涯の生業とする仕事を選ぶうえで、仕事に対する『やりがい』が一つの基準になってくるかと思います。私が仕事にやりがいを感じるときは『誰かの役にたっている』と実感できるときです。整形外科の仕事は痛みなどで苦しんでいる人からその苦痛を取り除き、より良い状態を提供することです。治療によって患者さんが良くなる姿をみると、整形外科という仕事に対して心からやりがいを感じることができます。
これから超高齢化社会を迎える中、整形外科のニーズは今まで以上に高まってきます。名大整形外科の関連病院は東海圏を中心に数多くあり、より良い医療を行うには皆さんの若いチカラが必要です。是非、名大整形外科の一員として私たちと一緒に働きましょう。