2022年7月の合同カンファレンスの報告

2022年7月21日(木)、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。専攻医による4例の症例提示と国立長寿医療研究センターから2題の講演がありました。(文責:小杉山裕亘、松本太郎)

日時:2022年7月21日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 今釜 史郎 先生

症例1 TKA術後の大腿骨顆上粉砕骨折に対してTKA再置換術施行した症例

刈谷豊田総合病院 北見知靖 先生
交通外傷によりTKA周囲骨折を来した。大腿遠位外側部は粉砕し骨折線は骨幹部に及んでいた。再置換術を施工し骨幹部はケーブルで締結した。3ヶ月で骨癒合し良好な経過を得た。TKA周囲骨折は高齢で粗鬆骨であることが多いため、骨接合術が難渋し偽関節や再手術に至ることもあり、再置換術は骨接合術に比べ良好な成績を得られる可能性がある。

症例2 小開放創のみを伴う脛骨腓骨骨幹部開放骨折Gustilo IIIcの一例

名古屋掖済会病院 加藤 三保子 先生
土嚢が崩れ右下肢を挟まれて受傷し右下腿内側に1cm挫創が2か所のみであったが、造影CTにて前脛骨・後脛骨・腓骨動脈の血流途絶を認めた。受傷9時間後に血流再開し足部の血流は良好となった。本症例は血流再開までに6時間を超えていたが患肢温存できた理由として、下腿遠位で筋量が少ない、完全切断ではなく側副血行路が保たれていたことなどが考えられた。

症例3 当院で経験した動物外傷の4例

中津川市民病院 田中耕平 先生
動物外傷は特殊な創部パターンであり、感染症への注意が必要である。熊外傷、イノシシ咬傷、サル咬傷、マムシ咬傷など4症例について報告した。熊外傷では前頭部挫創、手指中節骨開放骨折を受傷し、ドクターカーにより救急搬送。同日洗浄・ピンニング術を施行し、経過良好だった。各動物外傷で菌種が異なるとも言われており、適切な初期対応と抗生剤の選択をする必要がある。

症例4 サリルマブ投与中に人工膝関節全置換術を施行した関節リウマチの一例

江南厚生病院 斎藤 雄馬 先生
RAの疾患活動性が増悪してきたためPSL+SARに治療を変更し、活動性は改善したが膝関節の破壊が進行してきたためTKAを施行した。術前2週からSARを休薬し術後4週で再開した。創治癒遅延を認めたが抗生剤投与と軟膏処置により術後12週で創治癒が得られた。IL-6阻害薬の特徴として術後体温やCRPの上昇が乏しいこと、創部治癒遅延が起こりやすく、SARの術後経過に及ぼす影響はさらなる症例検討が必要である。

演題1 脊椎骨折を1000例調べてみましたー様々な切り口で見えるOVFの実態ー

国立長寿医療研究センター 若尾 典充 先生
OVF受傷後1年の偽関節率、リスクファクターを調査し、ロジスティック解析をした。多変量解析で後壁損傷が、1年後の偽関節率のリスクファクターであった。偽関節の有無によらず1年後の活動性に有意差はなかった。また、MRI:T2輝度変化は受傷1年後の歩行能力低下のリスク因子となった。受傷時のMRIT2highは歩行能力低下を予測する重要な因子である。

演題2 FLSの現状と課題

国立長寿医療研究センター 渡邉 剛 先生
整形外科医、リハビリテーション医、老年内科医、薬剤師等を含むFLS(骨折リエゾンサービス)チームとして2次骨折予防への介入が大腿骨近位部骨折後の再骨折を減少することが報告されており、当院においてもFLS導入により大腿骨近位部骨折後の再骨折が減少した。骨折予防FLS外来も取り組んでおり、骨粗鬆症のみならず、介護やフレイル、老年内科的な問題もチームとして対応している。地域連携を強化することが課題である。