2022年9月 合同カンファレンス報告

2022年9月15日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。専攻医による4例の症例提示と県立多治見病院から2題の講演がありました。(文責:小杉山裕亘、大野祐輔)

日時:2022年9月15日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 建部将広先生

症例1 上腕骨外顆・内側上顆骨折を合併した小児肘関節脱臼の1例

市立四日市病院 魚見航平先生
転落外傷により肘関節脱臼骨折を来した。上腕骨外顆・内側上顆骨折を合併していた。術後9週で抜釘術を行い、屈曲可動域制限が次第に改善傾向にある。外顆骨折と内側上顆骨折を合併した肘脱臼は症例報告程度で稀であり、遠位骨端線離開との鑑別を要する。治療法や外固定期間に関して今後症例を蓄積し検討の余地がある。

症例2 両膝関節樹枝状脂肪腫の1例

八千代病院 西郷峻資先生
数年前から関節水腫を繰り返していたが、診断的治療として滑膜切除を行い、樹脂状脂肪種と病理学的に診断した。樹脂状脂肪種は90%が膝関節に発症し、20%は両側例とされ、滑膜切除後の再発は少ないとの報告が多いため、早期の滑膜切除が推奨されると考えられる。

症例3 正中神経麻痺を合併した小児上腕骨顆上骨折の2例

安生更生病院 大山博己先生
小児上腕骨顆上骨折の合併症として神経麻痺を伴うことは決して稀なことではない。術前術後に上腕骨顆上骨折に正中神経麻痺を合併した2例について報告した。神経麻痺については保存治療で観察してよいとする見解や初回手術時に展開すべきとの相反する見解があるが、保存治療で経過をみたとしても2-3か月で回復兆候が見られない場合は何らかの阻害因子の可能性を考えるべきであり、その際MRIや超音波検査は非常に有用となる。

症例4 母指挫滅に対して母指再建を施行した2症例3指

名古屋大学附属病院 石原典子先生
重度母指損傷を来した2例3指について報告した。母指再建時には機能面と整容面の両方を考慮しなければならず、腹部有茎皮弁、Wrap-Around-Frap、足趾移植術といった方法が選択肢となりうる。それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、患者との共通意思決定を行い、治療方針を決定していく必要がある。

演題1 ロボット支援下人工膝関節置換術の小経験

岐阜県立多治見病院 高津哲郎先生
整形外科領域でのロボット支援下手術としては、2019年6月にTHAが、7月にTKAが保険適用となった。TKA支援ロボットはストライカー社(Mako)、ジンマーバイオメット社(ROSA)、スミス&ネフュー社(NAVIO→CORI)から開発されており、使用法、制御法、術中プランニングなどは3社3様である。ロボット支援下人工膝関節置換術は、骨切り精度の向上により、適切な下肢アライメントおよびインプラント設置が得られ、ひいては患者満足度の向上や長期成績向上への期待がもてると考えられる。

演題2 整形外科・手外科用手術機器の開発-市中病院の医師が出来ること-

岐阜県立多治見病院 新井哲也先生
「ほしいと思う手術器具がなければ自分で創ればよい」という座右の銘で、機器開発を進めている。①新井鉗子②BEARマイクロサイザーと自作品を2つ紹介。機器開発では、薬事での認可を得られなければ医療機器として認められない。技術者との相談から経営者会議までの段階で破綻となることが多く、メーカーとの議論の繰り返しが重要である。近年インプラントは海外製輸入が多数を占め、個人名や大学の名を冠した製品を残すことは特に栄誉なことであり、目標にしたいと考え開発にあたっている。