2024年1月18日(木)、合同カンファレンスをweb開催しましたので、ご報告いたします。名古屋大学の浅井秀司先生の司会により、専攻医による3例の症例提示と静岡厚生病院よりご講演がありました。
合同カンファレンス記録 (文責:福井順、山内一平)
日時:2024年1月18日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 浅井秀司 先生
症例1 股関節固定後大腿骨近位部骨折に対する治療の1例
協立総合病院 赤堀公紀先生
69歳女性、左先天性股関節脱臼に対する左股関節固定術後に左大腿骨近位部骨折を生じた症例を経験した。屋内段差で転倒し、左大腿部痛を主訴に救急外来受診、インプラント下端で左大腿骨近位部骨折を認めた。
症例2 臀部筋区画症候群の2例
静岡済生会総合病院 三宅道大先生
症例1 40歳 男性。右下肢の脱力および感覚脱失を主訴に当院救急外来へ受診。症例2 42歳 男性。右下肢の脱力および痺れ感覚を主訴に当院救急外来へ受診。
症例3 右下腿内側滑膜肉腫辺縁切除後に追加広範切除と有茎皮弁を行った一例
名古屋記念病院 長田直大先生
症例は50歳女性で特記すべき既往歴を認めない。7-8年来の右下腿遠位の疼痛、腫脹にてX-1年に前医受診した。
講演1 高齢関節リウマチに対する当科の取り組み
静岡厚生病院 松本拓也先生
リウマチ患者は高齢化しており、2017年本邦では70歳以上の患者が46%となっている。合併症に合わせたリウマチ治療、高齢発症に対する治療が必要である。65歳以上を高齢発症リウマチと定義することがおおく、男性の比率が高く、膝や肩などの大関節が罹患し、急性発症、抗CCP抗体が陰性となりやすいといった特徴がある。関節の炎症が強く関節破壊もきたしやすい。臨床像として、入院を要することが多く、DMARDsやステロイドへの反応が悪い、合併症でMTXが使用できないことも多い。当院の治療方針としては可能であれば入院加療を行っている。入院し大切なことの一つに治療体制の構築があげられる。2022年から地域包括ケア病棟が稼働しており有用となっている。当院で2019-2021年の間に、70歳以上の症例は15例あり、MTX20%、Bio/JAKi60%で治療を行った。高齢者への投薬に関して、bio製剤は若年に比べ効果が少なく重症感染の合併症率が高い。JAKiは若年に比べ同等の有効性で重症感染は多い。高齢であってもT2Tを実践すれば身体機能を改善し、関節破壊を抑制できる。
高齢リウマチ患者に対する足趾手術については切除関節形成術が行われてきたが、近年関節温存手術が行われるようになってきている。母趾に対しては水平骨切り術、外側趾に対しては中足骨斜め短縮骨切り術を行っている。母趾の回旋変形の強い場合ロッキングプレートを用いた近位楔状骨切り術を行っている。関節を温存するようにしている。高齢患者に対しても感染の併発やADL低下をきたすため足趾関節形成は必要な場合があると考えている。
リウマチ患者は疾患活動性が上がるとフレイルになりやすいことが知られている。サルコペニアの有病率も高い。当院では体組成計によるBIA法で骨格筋量を定期評価している。高サイトカイン治療により骨格筋量は増加するとの報告がある。また、オーラルフレイルにも注目しており、水飲みテスト、反復唾液嚥下テストを行い評価している。リウマチとOA患者を比較すると嚥下障害が多かった。リスク因子は年齢、顎関節症買い、頸椎可動域制限、握力低下であった。多方面からの介入が望ましいと考えている。
講演2 人工関節のフォローに対する当科の取り組み
静岡厚生病院 天野貴文先生
定期フォローの重要性としてはカルテ記録などを元に経過(手術施設、医師、日時、アプローチ、人工関節情報など)をしっかり把握する。あたり前のことではあるが保存義務に期間の限定があり、破棄された場合に追えなくなる。当院ではカルテ番号とは別にOAの方用の番号を振り、管理している。メーカーなどに問い合わせをすることもある。画像の変化を把握し、自覚症状の変化があれば画像を比較していく。自覚症状の変化がなければ初回と最新の画像を比較する。Xpの位置、角度、摺動面の変化、インプラント周囲の骨反応などを評価する。再手術の必要性についてはインプラントの位置変化、ライナーの摩耗などが挙げられ、治療介入が必要な場合はリハビリ、隣接関節、骨粗鬆症の治療などを行う。
当科の現状としてはXp、股関節スコア、可動域などのチェックを行い、患者さんは6カ月に1回とすることが多い。アンケート調査の結果では6か月おきの通院、30分以内の通院時間を希望される患者が多い。カレンダー、スマホで管理している人が多いが、予約表をシールにして渡すのはあまり良い反応ではなかった。予約表にQRコードを添付することも検討したが予算が合わないことや自身がその場で入れられるため不要かなどの問題がある。継続診察のために必要性を理解してもらう様々なアプローチが必要。HPを作成して情報発信、院内広報誌、人工関節手帳(人工関節に関わる情報を記載)の配布し高評価(57%)が得られている。