2025年12月11日(木)、合同カンファレンスをweb開催しましたので、ご報告いたします。
名古屋大学の鈴木望人先生の司会により、専攻医による4例の症例提示と中東遠総合医療センターよりご講演がありました。
合同カンファレンス記録 (文責:松浦唯・舘寛人)
日時:2025年月12月11日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 鈴木望人 先生
急性感染性電撃性紫斑病による四肢末梢壊死に対して再建術を施行した1例
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 早稲倉崚真 先生
急性感染性電撃性紫斑病(AIPF)は急速に進行する播種性血管内凝固と多臓器不全を特徴とし、致死率が極めて高い病態である。敗血症コントロールと抗凝固療法が治療の主体。本症例は、前胸部壊死性筋膜炎とG群溶連菌による劇症型菌血症から敗血症性ショックを呈し、AIPFに伴う対称性四肢壊死(SPG)を発症した71歳男性である。
足関節インプラント周囲骨折に対して順行性髄内釘を用いて距腿関節固定を実施した1例
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 坂田裕 先生
本症例は、SOTOS症候群を基礎疾患にもつ22歳男性であり、外傷エピソードなく右足関節の腫脹を自覚して当院を受診した。初診時のX線では脛骨遠位部骨折(AO分類43-A)および腓骨骨折を認め、明らかな外傷歴がない点から、基礎疾患に伴う骨質不良やCharcot関節様変化の関与が示唆された。
手術加療を要した腓骨骨幹部偽関節の一例
久美愛厚生病院 永金宗臣 先生
腓骨骨幹部骨折は脛骨骨折に合併して生じることが多く、単独での骨折は比較的稀である。また安定性が得られやすく、保存療法にて治癒することが多い。今回、手術を行った腓骨偽関節の一例を経験したので報告する。症例は64歳男性。スキーで転倒し受傷、近医にて左腓骨骨幹部骨折と診断され保存的に加療された。
高度不安定性を伴う脛骨高原骨折に対して予防的CLAPを併用し段階的内固定を行った一例
名古屋医療センター 武藤聡志 先生
本症例は、7mの高さの木から転落した48歳男性であり、搬送時より右膝周囲に高度な腫脹と変形を認めた。既往に特記すべき事項はなかった。X線・CT により、Schatzker VI 型、AO 41C3.3 に分類される高エネルギー外傷に伴う脛骨高原骨折と診断された。
講演1 感染性偽関節の再建はじめました
中東遠総合医療センター 仲野隆彦 先生
2025年7月から当院の「手外科センター」は「手外科・外傷再建センター」として再編される。従来の手外科に加え、重度四肢外傷や骨盤・寛骨臼骨折など高度外傷に対応する体制を強化するためである。重度外傷再建はこの数十年で大きく進歩し、1986年の Godina による早期デブリドマンと72時間以内の軟部再建、2000年の Gopal の “Fix & Flap” が基盤となってきた。本講義では、感染性偽関節の概念、診断基準、治療原則、再建方法を症例とともに解説する。
講演2 思ったよりも役に立つ ガラパゴス的手指外傷治療
中東遠総合医療センター 石井久雄 先生
今回は私が行っている指尖部切断に対する graft-on-flap 法に焦点を当てる。年齢分布を見ると、小児例が中心で、基節骨骨折は10歳以降に多く、中節骨骨折はより低年齢にもみられる。年齢による損傷形態の違いは治療選択に影響する。graft-on-flap 法は松井らが1995年に原法を報告し、平瀬らが2003年に命名した。再接着が困難な症例、特に爪床損傷を伴う指尖部外傷に対する再建法として定着した。かつては断端形成を主体とし、掌側V-Y皮弁も併用していたが、oblique triangular flap を用いることで整容性と長さの回復が改善し、再建の幅が広がった。