5月の合同カンファレンスの報告

2019年5月16日、研究棟1号館地下1階会議室において、名古屋大学整形外科合同カンファレンスが開催されました。若手整形外科医による症例提示、中日病院からの講演がありました。(文責:仲野隆彦、藤田明子)


症例1 スポーツ外傷後の小児化膿性股関節炎の一例

公立西知多総合病院 大道 俊文 先生

スポーツ外傷による内閉鎖筋損傷から化膿性内閉鎖筋炎を起こし、骨髄炎、化膿性股関節炎へ波及したと考えられる症例を経験した。閉鎖筋炎の好発年齢である小学生スポーツ外傷後の股関節痛の診断には注意が必要である。

 

症例2 距骨下関節脱臼の一例

半田市立半田病院 高橋 亮哉 先生

全外傷性脱臼の約1%と言われている距骨下関節脱臼を経験した。徒手整復を行い、一時的な距踵関節、距舟関節固定とギプスで治療した。脱臼方向によっては観血的整復を要する可能性がある。

 

症例3 原因不明の骨破壊性病変に対し手術治療を要した一例

豊橋市民病院 岡田 裕也 先生

原因不明の頸椎破壊性病変を病巣掻爬、腸骨移植術で治療した。結核などの弱毒菌感染を疑い、複数回の検体採取を行うも起因菌は同定されず、感染とは異なる病態の可能性も考えられた。

 

症例4 大腿骨骨幹部開放骨折後の脚短縮の治療について

安城更生病院 吉野 桜子 先生

10年前に左大腿骨骨幹部開放骨折受傷し、MRSA感染を起こしたが、創外固定で骨癒合が得られた。現在2cmの脚長差があり、腰痛および下肢のしびれがある。補高による保存治療の方針だが、骨延長の適応はあるか。

 

演題1 アスリートの診療・競技支援 ―整形外科医、手外科医として― 

中日病院 中尾 悦宏 先生

スポーツ選手の治療では、治療時期、外傷か障害か、保存治療か手術加療か、治療期間について様々なケースがあるため対応し考慮する必要がある。有鈎骨鈎骨折は、野球・ソフトボール選手など道具を強く握るようなスポーツにおこり、鈎切除が行われる。復帰の過程で、豆状三角骨関節痛の出現することが多く、手内筋に着目したリハビリテーション導入で良好な成績を得ている。

 

演題2 Kienböck病に対する橈骨骨切り術

中日病院 中村 蓼吾 先生

Kienböck病に対する橈骨骨切り術には、短縮骨切り術、Ulnar closing osteotomy、Radial closing osteotomyと大きく三つある。橈骨骨切り術の効果は、月状骨の免荷(関節面適合性の改善)と月状骨の血流改善にある。適応は、ulnar variance positiveまたはnegative、Lichtman分類により術式を考える。