2月の合同カンファレンスの報告

2020年2月20日、研究棟1号館地下1階会議室において、名古屋大学整形外科合同カンファレンスが開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示、碧南市民病院からの講演、大学股関節班のショートレクチャーがありました。(文責:神谷庸成、大内田隼)


症例1 複数指の指尖部切断に対し前腕からの遊離静脈皮弁で治療した3例

名古屋掖済会病院 櫻井 咲 先生

複数指の遊離静脈皮弁は顕微鏡での手術が必要であり施行施設が限定されるが、皮弁の挙上が容易で血管縫合箇所が少なく、指長の温存や整容的に長所のある治療法である。

 

症例2 大腿骨偽関節に対しMasquelet法を用いた一例

江南厚生病院 鏡味 佑志朗 先生

閉鎖性大腿骨遠位粉砕骨折に対してプレート固定されたが偽関節となった症例に対して、感染リスクなど考慮してMasquelet法を選択した。骨折部のデブリードマン、創外固定、セメントスペーサー留置を行い、二期的に髄内釘による内固定と腸骨より自家腸骨移植を行い経過良好である。

 

症例3 人工股関節術後に発生した腸腰筋内血腫の2例

浜松医療センター 杉浦 喬也 先生

人工股関節置換術後に腸腰筋インピンジメントが4.3%程度の症例で報告され、まれに血腫を形成することが報告されている。治療は保存加療が行われるが、難治症例にはCup revisionや腸腰筋切離などが行われる。

 

症例4 脊損後、褥瘡感染から骨髄炎を併発し、難治化により扁平上皮癌に至った一例

豊田厚生病院 足立 維 先生

脊髄損傷後完全麻痺で、坐骨部・大転子部に褥瘡・感染を繰り返す症例を経験した。原因不明の高Ca血症を併発し、褥瘡部に隆起状の肉芽組織を認めたため、病理提出したところ、有棘細胞癌と診断した。褥瘡治療では癌化する可能性も念頭に置く必要がある。

 

演題 当院におけるCPP法における人工骨頭挿入術

碧南市民病院 佐藤 良 先生

大腿骨頚部骨折におけるCPP法は、梨状筋を温存する後方アプローチ法で、脱臼率を低減でき、拡大展開しやすいなどの利点もある。従来から行われている後方アプローチ法に展開などの操作が近く手技の習得も容易であると考えられる。

 

大学担当:股関節班ショートレクチャー

人工股関節のXP評価とピットフォール

大澤 郁介 先生

基本的なXP評価項目として、緩みの評価にはradiolucent line, subsidence, cement fracture, migration、長期症例の評価にはwear, osteolysis、セメントレスの評価にはspot welds, stress shielding, cortical hypertrophyをチェックする必要がある。