2月の合同カンファレンスの報告

2021年2月18日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示と西尾市民病院から2題の講演がありました。

(文責:田中 宏昌、浅見 雄太)


日時:2021年2月18日(木)18:30~

場所:Web開催

司会:名古屋大学 山本 美知郎 先生

 

症例提示

症例1 膝窩部発生ガングリオンによる腓骨神経麻痺の一例

県立多治見病院 鷲見 聰 先生

誘因なく発症した右下垂足を主訴に腰椎疾患を疑い精査したが病変は明らかでなく経過観察とした.その半年後に右膝窩部の腫瘤に気づき受診されMRIで膝窩部腫瘍による圧迫が麻痺の原因と考え,腫瘍切除を行いガングリオンと診断された.腓骨神経麻痺の鑑別診断として,稀ではあるが膝窩部ガングリオンも考慮すべきである.

 

症例2 結核性股関節炎により右大腿骨頭の急速破壊を起こした一例

名古屋第一赤十字病院 水野 健 先生

進行する右股関節痛を主訴に紹介受診となった. 1週間での急速な骨頭破壊と臀筋内水腫を認め,化膿性股関節炎の疑いで抗生剤とドレナージによる治療を開始した.関節液および右大腿骨頭の採取により結核性股関節炎の確定診断を得た.治療介入の遅れと骨頭破壊によるADLの急激な低下を招きやすく,本症例も診断と治療に難渋した.

 

症例3 Bosworth型足関節脱臼骨折の一例

総合上飯田第一病院  近藤 史樹 先生

スケートボードにて転倒し右足を捻って受傷した。右足関節脱臼骨折を認め、腓骨近位骨片が脛骨後外側骨隆起を超えて転位している所見からBosworth型足関節脱臼骨折と診断し、受診当日に緊急で観血的整復固定術を施行した。通常の足関節脱臼骨折とは異なり閉鎖整復は困難である。

 

症例4 脛骨後外側高原骨折に対してTcherne-Lobenhoffer approachを用いてlocking mesh plateでの内固定を行った2例

豊橋市民病院 舘 寛人 先生

脛骨高原骨折後外側骨片を解剖学的整復するのは難しく、その骨片を固定するのに有用な内固定材料はない。腓骨頭を骨切りするTcherne-Lobenhoffer approachを用いることで後外側骨片を直視下に解剖学的整復する事が可能となり、さらにmesh plateを骨片の大きさや形状に合わせて自在にcut、bendingする事で後外側骨片に対して強固な固定ができた。

 

演題1 Dual energy CTの整形外科領域での応用と当院での使用経験

西尾市民病院 内藤 健太 先生

Dual energy CTの整形外科における応用と使用経験について講演された。Dual energy CTは2つの管電圧で撮影することで物質弁別が可能であり、金属アーティファクトの軽減や骨挫傷の評価ができる。新規腰椎圧迫骨折、各種骨挫傷、THA後の恥骨骨折の画像を供覧し有用であることが示された。

 

演題2 当院における化膿性脊椎炎症例の検討

西尾市民病院 犬飼 規夫 先生

約6年間で加療した化膿性脊椎炎は70歳以上の高齢者がほとんどであった。疼痛発症より2週程度でMRIにより診断されている症例が多かった。疼痛発症早期にはMRIによる診断が困難な場合もあり、化膿性脊椎炎を疑う場合はMRIを再検する必要がある。