4月の合同カンファレンスの報告

021年4月22日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示と米田病院から2題の講演がありました。

(文責:川島 至、藤井 整)


日時:2021年4月22日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 小嶋 俊久 先生

症例提示

症例1 腸腰筋膿瘍との鑑別を要した腸腰筋血腫の一例

名古屋掖済会病院 鈴木 誠人 先生

腸腰筋膿瘍を疑いCTガイド下穿刺を施行し穿刺液および血液培養が陰性であり受傷機転があることから、腸腰筋血腫と診断した症例を経験した。腸腰筋血腫症候群は、腸腰筋内の出血により血腫が増大し大腿神経を圧迫することで生じ、軽度の神経症状では保存療法が望ましいが、麻痺が進行する場合は外科的減圧術などを考慮する。

 

症例2 仙骨骨折の内固定術後に生じた遅発性L5神経根障害(術後3ヶ月)に対して腰仙椎固定術を行った1例

刈谷豊田総合病院 清水 景太 先生

高所から飛び降りにより受傷した、外傷性血気胸、足関節骨折を合併する不安定型仙骨骨折(Dennis分類Ⅲ、Roy-camille分類Ⅱ)を経験した。受傷当日に血管内塞栓術、非観血的整復術および創外固定術を施行し、16日目に腸骨から第4腰椎にかけての後方固定術を施行した。術後3か月時に第1仙椎右上関節突起の骨癒合遅延によるL5神経根症状が出現し右L5/S1椎間関節切除および経椎間孔後方腰仙椎固定術を施行した。

 

症例3 橈骨遠位端骨折の掌側ロッキングプレート固定術後に合併した遅発性総指伸筋腱断裂の一例

一宮市立市民病院 佐藤 駿文 先生

橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレート固定3年経過後、総指伸筋断裂した症例を経験した。掌側ロッキングプレートの抜釘と長掌筋腱を用いた腱移植術施行した。橈骨背側のロッキングスクリューの突出が原因と考えられた。フォロー時にCT撮影やエコーによるロッキングスクリューの突出の有無の確認が必要であると考える。

 

症例4 Denosumab使用中の患者にて大腿骨非定型骨折を起こした1例

中津川市民病院 杉野 貴之 先生

閉経後骨粗鬆症の症例に対して1年半前よりDenosumabの使用を開始され誘因なく右大腿部痛が出現した症例を経験した。AFFの診断後翌日に髄内釘による内固定を施行した。Teriparatide製剤を開始し術後2週には歩行器歩行が安定した。AFFはBP製剤が骨の材質特性や強度に悪影響を与え生じるとされ、Denosumabも同様の機序でAFFを起こしたと考えられる。

 

演題1 新鮮アキレス腱断裂の保存療法について日整会ガイドラインの変遷と当院での治療法

米田病院 米田 實 先生

早期リハビリテーションを行うと保存療法と手術療法が非劣勢であることが報告されてきた。当院では、エコーやMRIを定期的に行い、再断裂率1.9%、全例ヒールレイズ可能であった。治療成績は4週以内の腱断端間の離開に左右され、離開している場合は最大底屈位固定と免荷が無難であると考える。

 

演題2 若手整形外科医が知っておきたい腰椎分離症のプライマリーケア

米田病院 福山 陽子 先生

当院では初診時からMRI撮影を行い、早期発見に努めている。コルセットを用いた患部への負荷の低減、腰部への負荷の原因となるような身体機能の改善、安静による体力低下の予防を行っている。病期に応じてコルセットを選択、リハビリで可動域の改善、体幹筋力の強化を競技別のプロトコルに沿って行っている。20例を対象に1.5か月ごとにMRI、CTを評価したところ、12例でプロトコル通り3カ月での競技復帰かつ骨癒合が確認できた。