2021年6月17日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示と中部労災病院から2題の講演がありました。
(文責:加藤友規、浅見雄太)
日時:2021年6月17日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 今釜 史郎 先生
症例提示
症例1 示指floid reactive periostitisの一例
名古屋第一赤十字病院 黒川 寛 先生
示指基節骨尺側に径22mmの腫脹、発赤を認め受診された。Xp、CTでは皮質骨の破壊と周囲の増骨性変化を認め、MRIではT1強調像で軽度低信号、T2強調像で高信号の腫瘤を認めた。切除生検を施行したところ悪性所見は見られず、florid reactive periostitis(FRP)と診断された。この疾患の存在を知っておくことが重要である。
症例2 中手骨底部骨折を伴う第5CM関節掌側脱臼の一例
安生更生病院 大鹿 泰崇 先生
左手第5CM関節の掌側脱臼および、中手骨底部の粉砕骨折を認める症例を経験した。受傷後1週で橈骨より骨移植を行った上で第5中手骨から有鉤骨にかけてbridge plateにて固定を行った。術後1週より手指自動運動開始、術後6週より手指他動運動を開始、術後12週でプレートを抜釘し、full grip可能となり良好な可動域が得られた。
症例3 踵骨骨折術前に深部静脈血栓を認めIVCフィルターを留置した症例を経験して
浜松医療センター 杉本 遼介 先生
左踵骨骨折、第4腰椎椎体骨折を受傷し、踵骨骨折に対しては待機的手術、腰椎椎体骨折に対しては外固定による保存的治療となった。踵骨の手術前日の下肢静脈エコー検査にて左膝窩静脈に浮遊性の血栓を認めた。血管外科にコンサルトし、手術延期、IVCフィルター施行したうえでの手術予定となった。IVCフィルターの挿入は侵襲性の伴う処置であるが、肺塞栓症は時に致命的であり、リスクの高いDVT症例においてその恩恵は大きいと考える。
症例4 ステム周囲骨折骨接合術後の感染性骨癒合不全に対してセメントロングスペーサーを用いて感染および骨癒合不全を制御した一例
名古屋第二赤十字病院 坂東 皓介 先生
ステム周囲骨折VancouverB1に対してプレートにて骨接合後6カ月で瘻孔形成と排膿を認めた。骨折部は癒合を認められなかったため、デブリードメントしたがその術後10ヵ月後に再度、瘻孔形成と排膿を認めたため人工関節、プレートを全抜去した。手製の抗生剤含有セメントロングスペーサーを挿入した。術後3ヶ月で感染は沈静化し、骨癒合不全部も転位を認めなかったため、セメントロングステムを用いた人工関節再置換術を施行し再燃を認めず、骨癒合を認めた。
演題1 脱臼しない人工股関節への試み
中部労災病院 笠井 健広 先生
中部労災病院では関節外科で年間約200件の手術を行っており人工股関節に関してはALS approachで行っている。利点としては脱臼が少なく、感染しにくい、脚長を合わせやすいこと、欠点としては難易度が高い、learning curveがあることなどが挙げられる。脱臼しないためには正確なインプラント設置、大径骨頭、前方側方進入などが挙げられる。
演題2 脊椎脊髄損傷・入門~初級:若手Drおよび脊椎班以外の先生方へ
中部労災病院 松本 智宏 先生
高齢者のlow energyの脊髄損傷が増加している。まず一般外傷と同じく、全身状態の安定化を図ることが重要である。C6が残存していると手関節背屈が可能となるので、自動車の運転ができるかどうかの指標になる。C4以上であれば横隔神経麻痺となり呼吸管理が重要である。脊髄ショック離脱の目安は球海綿体反射(BCR)の回復が指標になる。最近ではSLIC scale、TLICS scale、TL AOSISなどの分類が脊損センターでは良く使用されている。