7月の合同カンファレンスの報告

2021年7月29日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による3例の症例提示と岡崎市民病院から2題の講演がありました。

(文責:福井順、栗山香菜恵)


日時:2021年7月29日(木)18:30~

場所:Web開催

司会:名古屋大学 建部 将広 先生

 

症例提示

症例1 人工股関節感染に対して大腿骨ステムを温存し2期的人工関節再置換を行った一例

江南厚生病院 中島 良 先生

セメントレス人工股関節置換術後に慢性人工関節感染が疑われ、二期的人工関節再置換を行った症例を経験した。診断翌日に人工関節抜去および抗生剤含有セメントを充填し、6週間抗生剤点滴後に2週間内服を行い、術後8週で人工関節再置換を行った。今後も慎重に長期経過を見る必要がある。

 

症例2 胸椎硬膜外に発生したmetaplastic meningiomaの一例

安城更生病院 鏡味 佑志朗 先生

T8-9硬膜外発生のmetaplastic meningiomaに対して手術を行った症例を経験した。下肢近位筋の軽度筋力低下と歩行困難があり、腫瘍切除、T7.10 partial laminectomy、T8.9 total laminectomyを行った。metaplastic meningiomaの頻度は髄膜腫の1-5%と非常に稀である。

 

症例3 四肢銃創にて死亡した一例

名古屋医療センター 家崎 雄介 先生

右鼠径部と左手部への銃創に対し治療を行った症例を経験した。バイタル測定困難な状態で搬送され、2回の心停止からのROSCを繰り返し、Resuscitative endovascular balloon occlusion of the aorta (REBOA)およびInterventional Radiology (IVR)施行したが、下肢阻血となり股関節離断術を行った。

 

演題1 知っておきたい整形外科感染症について

岡崎市民病院  加藤 大三 先生

腸腰筋膿瘍や化膿性脊椎炎は、起因菌同定率は高く来院したらまずドレナージ、穿刺を試み抗酸菌も含めた培養検査を行う。MSSAが多いが嫌気性菌、連鎖球菌も多い。CEZ単剤ではカバーできないことが多い。SSI予防には基本的な感染対策を図る。術前に改善可能な患者要因は改善を図る。周術期抗菌薬は、通常の予定手術はCEZで十分、執刀直前に終了、3時間ごとに追加投与を行う。術後抗生剤投与は必要とされない。

 

演題2 岡崎市民病院での骨軟部腫瘍診療

岡崎市民病院  山田 健志 先生

左乳がん術後40年以上経過して発症した脊椎および恥骨骨転移という高齢者の症例に対し予後予測に基づき手術を行い術後1年以上在宅生存することができた症例を提示された。四肢長管骨転移性骨腫瘍に関しては、手術適応や術式の決定には骨折リスク評価や予後予測などの指標を参考に積極的に行うべきであることを講演された。