9月の合同カンファレンスの報告

2021年9月16日、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。若手整形外科医による4例の症例提示と上飯田第一病院から2題の講演がありました。(文責:長谷川純也、森田圭則)


日時:2021年9月16日(木)18:30~

場所:Web開催

司会:名古屋大学 平岩 秀樹 先生

 

症例提示

症例1 思春期に発症した化膿性外閉鎖筋炎の一例

市立四日市病院 黒川 輝樹 先生

17歳男性の化膿性外閉鎖筋炎に対して保存治療を行った症例を経験した。股関節痛と発熱を生じ、MRIで外閉鎖筋の腫大を認め血液培養からMSSAが検出された。抗菌薬投与で治癒が得られた。化膿性閉鎖筋炎は平均年齢8.3歳と報告されており本例は比較的稀であると考えられる。

 

症例2 手指皮膚欠損に対してPerifascial areolar tissue(PAT)を用いて治療した3

豊橋市民病院 倉橋 真吾 先生

骨や腱が露出した創部においては、一般的に局所皮弁や遊離皮弁などが行われるが、perifascial areolar tisuue(PAT)移植による創閉鎖法も選択肢の1つとして考えられる。PAT移植は手技が簡便であり、皮弁より低侵襲である。また、患者は早期リハビリ開始が可能である。

 

症例3 高齢者の橈骨遠位端骨折の掌側ロッキングプレート固定における人工骨移植の効果-TRON study-

名古屋大学 森 悠祐 先生

多施設共同研究により高齢者頭骨遠位端骨折の手術治療における人工骨移植の効果について検討した。掌側ロッキングプレート単独の症例と人工骨を併用した症例の比較で、骨癒合、Implant Failure、整復位など臨床成績およびX線学的評価に有意な差はみられなかった。

 

症例4 トファシチニブ投与中にTKA施行した1

江南厚生病院 柘植 峻 先生

MTX10mg/週+TOF10mg/日で加療しているRA患者に対して、TOFを一時休薬してTKAを施行したが、術後縫合不全により創部デブリードメン+再縫合処置を要した。本症例では、幸い創部は治癒し感染徴候ないことを確認してからTOF投与を再開した。感染に関して、今後はとくに注意深く観察していく必要がある。

 

演題1 スポーツ分野の治療から予防まで 青少年のサッカー・野球選手から学んだこと

上飯田第一病院  小田 智之 先生

青少年のサッカー選手の怪我には前十字靭帯損傷、足関節捻挫、Jones骨折などがある。また野球選手には上腕骨骨端線離開、肘内側上顆障害、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎がある。足関節捻挫の予防のため、バランス機能トレーニングや内在筋トレーニングを施行している。投球障害の原因としてはオーバーユース、コンディショニング不良、投球フォーム不良が挙げられる。投球フォームをハイスピードカメラで撮影し、角度を測る、AIで判定するなどのツールを開発中である。

 

演題2 腰椎椎間板ヘルニア内視鏡手術の初歩

上飯田第一病院  飛田 哲朗 先生 先生

腰椎椎間板ヘルニアの内視鏡手術は主にMicro Endoscopic Discectomy (MED) とFull Endoscopic Lumbar Discectomy (FELD)に分けられる。MEDは18mmの円筒を用い、FELDでは7-8mm程度のスコープを用い、脱出髄核に到達し摘出する。Open手術と比較して小さな創、少ない出血量、短い入院期間、局所麻酔下手術可能、高い手術点数などの利点がある。