2022年5月の合同カンファレンスの報告

2022年5月26日(木)、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。専攻医による4例の症例提示と重工記念病院から2題の講演がありました。(文責:川島至、藤井整)

日時:2022年5月26日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 小嶋 俊久 先生

症例1 歯突起偽腫瘍に対して経硬膜的に腫瘍切除を施行した2例

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 渡邊 隆太郎 先生
脊髄症を伴う歯突起偽腫瘍の2例に対して、後方固定は施行せず、椎弓切除+偽腫瘍切除を施行した。術後神経症状は改善し、偽腫瘍の再発や環軸椎の不安定性増悪は認めず経過している。

症例2 デクスメデトミジンによる鎮静下での鎖骨抜釘中に一時心停止となった健常若年成人の一例

西尾市民病院 内藤 健太 先生
右鎖骨骨幹部骨折後の患者にデクスメデトミジン(DEX)による鎮静を併用し、伝達麻酔+局所麻酔による抜釘術を施行した。術中に徐脈が生じその後に心停止となり、DEXの中止と硫酸アトロピンを投与して心拍再開と血圧上昇を認めた。DEXによる心停止の報告は散見され、使用する際は注意が必要である。

症例3  上腕骨内側上顆骨片の関節内嵌入を伴った肘関節脱臼の一例

中京病院 横山 弘樹 先生
内側上顆骨片の嵌入を伴う肘関節脱臼を受傷した思春期男子に対して、骨片をCCS固定し、外側側副靭帯の縫合を実施して良好な成績を得た。易脱臼性やROM制限などを認める際には骨片の関節内への嵌入を疑いCT撮影を行うことが有用である。

症例4 人工膝関節置換術後の膝蓋骨骨折に対して人工靱帯を使用した一例

東海中央病院 杉本 拓也 先生
左変形性膝関節症に対する人工膝関節置換術の術後1年7か月後に転倒受傷し、左膝蓋骨骨折を認めた。Ortiguera and Berry分類のType2と判断し、テンションバンド固定に加え、Leeds-Keio人工靱帯を大腿四頭筋腱後方から脛骨粗面に固定し補強した。

演題1  膝OA治療の最新ストラテジー ~当院における再生医療への取り組み~

重工記念病院 川村 佑介 先生
膝OAに対して変形が軽度であれば保存治療や関節鏡手術、中等度であれば膝周囲骨切り術、高度であれば人工関節手術を考慮している。これらに加えて第三の治療として再生医療にも積極的に取り組んでいる。膝OA手術には年齢だけでなく、重症度や活動性を考慮して適応を考え、再生医療も膝OAの症状緩和に非常に有効である。

演題2 ACL再建術の成績向上を目指して~当院での試み~

重工記念病院 宮本 健太郎 先生
ACL再建術において再断裂を防ぐために追加を検討すべき手技を述べた。まずはRamp lesionであり、損傷を見逃さないのと強固に修復することが重要である。また、MCL不全がある症例ではMCL再建を行う。最後に、Antero-lateral ligament再建/Lateral Extra-Articular Tenodesis補強術についても、不安定性が高度であれば検討が必要である。