2022年6月の合同カンファレンスの報告

2022年6月9日(木)、名古屋大学整形外科合同カンファレンスがWebで開催されました。専攻医による3例の症例提示と江南厚生病院から2題の講演がありました。(文責:森田圭則、小澤悠人)

日時:2022年6月9日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 岩月 克之 先生

症例1 腰椎椎間関節近傍嚢腫(lumbar juxta-facet cysts:LJFC)に対する保存療法の有効性について

中部ろうさい病院 伊藤 裕哉 先生
腰椎椎間関節近傍嚢腫(LJFC)では保存治療が行われずに手術が行われることも多い。保存療法を行なった44例を対象としてその有効性について検討した。手術に至らなかった症例は27例(61%)でまずは低侵襲な保存治療を先行した上で治療方針を決定することの重要性が再認識された。

症例2 発作性心房細動加療中に腸腰筋血腫を生じた一例

名古屋大学 寺澤 慧 先生
既往に発作性心房細動あり抗凝固薬内服中に誘因なく右下肢の腫脹と疼痛が出現し、右腸腰筋血腫の診断で入院した。大腿神経麻痺を合併したが保存治療で病状の改善が得られた。腸腰筋血腫は外傷性、特発性のものがあり、特発性は血友病、肝硬変、抗凝固療法を原因とする報告がされている。

症例3  透析アミロイドによる腋窩静脈の狭窄に対して外科的切除により改善した一例

刈谷豊田総合病院 山田 陽太郎 先生
透析歴20年で、右上肢シャント閉塞のため左上肢でのシャント増設を計画したところ、肩関節周囲のアミロイド沈着による腋窩静脈の狭窄と血流途絶が認められた。アミロイドの外科的切除により血流の改善が得られ、左上肢のシャント増設が可能となった。

演題1  コンピュータ支援脊椎手術 -ナビからロボまで-

江南厚生病院 都島 幹人 先生
脊椎手術においてはナビゲーション手術が発展しており、合併症回避や低侵襲手術において有用である。また、ガイド機能付きナビゲーションシステムであるロボット支援手術も導入されてきている。ナビゲーション、ロボットそれぞれの仕組みを正しく理解し、解剖学的知識の獲得と手術手技の習得をすることが習熟に重要である。

演題2 転位型大腿骨頸部骨折に対する人工股関節置換術

江南厚生病院 大倉 俊昭 先生
転位型大腿骨頸部骨折においてはTHA、HA、骨接合、保存的治療がある。高齢者では人工物置換が骨接合より良好な成績である。またHAよりもTHAでは機能scoreや痛みが少ないが、脱臼などの合併症は多い。活動性が高く、認知症がなく、麻酔のリスクが少ない患者にはDAAによるTHAを行い良好な成績を納めている。