2023年1月 合同カンファレンス報告

2023年1月19日(木)、合同カンファレンスをweb開催しましたので、ご報告いたします。
名古屋大学の中島宏彰先生の司会により、専攻医による2例の症例提示と半田市立半田病院よりご講演がありました。

合同カンファレンス記録 (文責:松本太郎、大野祐輔)
日時:2023年1月19日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 中島宏彰 先生

症例1 環軸椎回旋位固定に対して保存的加療が奏功せず後方固定術を施行した1例

安生更生病院 佐藤 香織先生

8歳女児、特記すべき既往なし、特に誘引なく頚部痛を発症し近医受診した。鎮痛剤で経過観察し、頚部痛は改善したが頚部可動域制限が残存しているため近医初診3カ月後に安生更生病院を紹介受診した。初診時CTにてFielding typeⅡの環軸関節回旋位固定と診断し、Glison牽引を14日間施行するもcock robinは改善せずHalo vest固定施行となった。Halo固定後7週で除去し、CTにて左環椎関節のリモデリングは得られていなかったが頚部のポジションは改善が得られていた。Halo除去後6日後の再診時に亜脱臼とcock robinの再発を認めたため手術方針とした。C1/2の後方固定術を施行し、現在術後2か月では症状の再燃は認めない。

症例2 関節リウマチ患者におけるSauve-Kapandji術後の橈骨遠位骨折の一例

JA愛知厚生連渥美病院 山本 茂人先生

症例は69歳女性。41歳の時に関節リウマチ治療を開始され、60歳で左人工膝関節全置換術及び左人工肘関節全置換術を実施されていた。63歳以降はメトトレキサート12mg/週、フォリアミン5mg/週、プレドニゾロン1mg/日、インフリキシマブ300mg/2か月で概ね安定していたが、67歳で左手関節の腫脹疼痛及び環指の伸展制限を認めたため、68歳で滑膜切除と腱移行及び腱剥離を伴うSauve-Kapandji(SK)法を実施した。術後翌日より自動ROM訓練を開始し、SK術後2か月半で疼痛及び環指伸展制限消失を認めたが、術後3か月でシートベルトをひねる動作で疼痛再燃増悪あり、レントゲンで橈骨遠位のSK尺骨切除レベルに骨折を認めた。橈骨骨折に対して掌側ロッキングプレートを用いてOpen Reduction and Internal Fixation(ORIF)を実施したが、ORIF術後4週で疼痛再燃あり、レントゲンでプレート近位端掌側に新規骨折を認めた。長腕ギプス固定を5週間追加して保存的に経過観察し、ORIF術後6か月で骨癒合を認めた。ORIF術後9か月現在、疼痛はないものの外見上の尺側偏位を認めている。今回、関節リウマチ患者におけるSK術後の橈骨遠位骨折の一例を経験した。

演題1 腰部脊柱管狭窄症に対する顕微鏡視下片側進入両側除圧術

宮坂 和良先生

顕微鏡視下片側進入両側除圧術の利点としては対側の傍脊柱筋の温存、術後創部痛の軽減、明るい術野、助手との術野共有が挙げられる。今回、半田市立半田病院における顕微鏡視下片側進入両側除圧術(24例)と両側開窓(28例)の比較を行った。結果として片側進入群で手術時間は短く、出血量は少ない傾向が見られた。合併症は片側進入群で術後血種1例、両側開窓群で硬膜損傷を1例認めた。
合併症への大作としてはレベルミスを起こさないため画像所見と術野の所見が異なればすぐにレントゲン確認し、術直後のレントゲン確認も行っている。硬膜損傷に対してはケリソン操作時に特に注意し、対側の硬膜損傷時は対側も開けて確認をしている。術後血種に対しては骨にしっかりbone waxを塗り、硬膜外からの出血はバイポーラーでしっかり焼いている。

演題2 当院におけるTHA-CT-based navigationの導入とTKAにおけるMISの工夫

吉岡 裕先生

従来の角度計の利点として、簡便で安価、カップの角度に関しては精度が高いと感がられる。欠点としてはカップの角度はよいが深度がわからないことが挙げられる。CT-based navigationでは、デバイスのトラッカー固定に2分20秒程度かかるが、ポイントレジストレーションの位置設定を5点行い誤差5㎜程度に、さらにポインターで登録すると1㎜以内の精度とすることができる。最大の利点として臼蓋リーミング時にどの深さをほっているかがわかるため、手術が安全に行える。半田市民病院でのTHA-CT-based navigationでのカップ設置の精度は、平均誤差が外方開角-1.3度、前方開角+0.89度であった。角度計使用では外方開角-4度、前方開角+3.6度であり、CT-based navigation使用の方が精度良好であった。また手術時間と出血量はほぼ同程度であった。MIS-TKAについて。おすすめ機械としてニーポジショナーが挙げられる。助手が一人ですむし、下腿の外旋内旋がコントロールが容易である。皮切は膝蓋骨1横指頭側から10㎝程度で行い、半月板切除と大腿骨後方の骨棘切除にはスプレッダーが有用と考える。

演題3 大腿骨頸部骨折に対するFNSの治療成績

若林 正和先生

半田市民病院では2018年より大腿骨頸部骨折の骨接合治療としてDepuySynthes社FNS(Femoral Neck System)使用している。従来のCCSやハンソンピンなどに比して、回旋不安定性や角度不安定性といった不安を解消でき、すべての機械がワンハンドルで可能なことも魅力である。整復としては解剖学的もしくは外方型をめざし、後療法では免荷が守れそうな患者では4週程度の免荷を、難しそうであれば術翌日から全荷重を許可している。半年以上フォローできた78例での平均手術時間は26.6分。平均手術待機時間は0.5日であった。手術時間に関しては、過去のCCHSが25分であり、ほぼ同等であった。
78例のうち77%で骨癒合を認めた。非転位型では89.4%が、転位型では58.1%で骨癒合を認めた。術後70.5%の患者が受傷前と同程度のADLに回復できた。
剪断型(とくにパウエル角56度以上)ではLSCや偽関節が生じやすい。またFNSでは26.7%で遠位ロッキングスクリューが抜きにくくなると報告がある。
原因としてはスクリューヘッドの折損やスクリュー挿入時の過度な固定、プレートスクリュー間に生じる過剰な負荷によって冷間圧接減少が生じることなどが挙げられる。今後BHP,THAが必要となる可能性がある患者の場合はFNSの使用には注意が必要でああり、半田市民病院では若年者の剪断型大腿骨頸部骨折に対してFNSの使用を継続している。