2023年9月 合同カンファレンス報告

2023年9月21日(木)、合同カンファレンスをweb開催しましたので、ご報告いたします。名古屋大学の岩月克之先生の司会により、専攻医による4例の症例提示と豊田厚生病院よりご講演がありました。

合同カンファレンス記録 (文責:岡田裕也、金子怜奈)
日時:2023年9月21日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 岩月克之 先生

症例1 新生児期にプロスタグランジンE1製剤(PGE1)を投与され全身性骨膜肥厚をきたした一例

中京病院 須田燎平 先生

症例は0歳1か月の左心低形成症候群の女児。左心低形成症候群の根治術であるNorwood手術を日齢35日目に実施した。Norwood手術が実施されるまでは動脈管を開存させる目的で大量のPGE1が投与されていた。Norwood術後に左手上肢の動きに違和感があり当科にコンサルトされた。

症例2 大理石病に伴った大腿骨転子下骨折の1例

渥美病院 佐藤圭太朗 先生

大理石病の既往のある24歳女性。階段で転倒し左大腿部を負傷した。左大腿骨転子下骨折の診断で骨折観血的手術を行った。

症例3: Essex Lopresti損傷を合併した高エネルギー外傷に伴う多発外傷の一例

半田市民病院 井戸田健 先生

症例は48歳男性で特記すべき既往歴を認めない.バイク走行中にトラックと衝突し受傷,当院に搬送された.

症例4: 踵骨骨折への術前徒手整復(大本法)が手術成績へ与える影響 多施設共同研究(TRON Study)

総合上飯田第一病院 髙橋英種 先生

踵骨骨折に対して術前徒手整復を行った場合と行わなかった場合の臨床成績と単純X線画像を比較し、その有用性を検討した。

演題1  側弯症の基本と治療の実際-当院の取り組み-

豊田厚生病院 辻太一 先生

脊柱側彎症の疫学として有病率は約2%と報告されている。側弯症の分類は成因により特発性側彎症(約80%)症候性側彎症(約20%)先天性側彎症に分類される。先天性側弯症の代表例として稀であるが症候性側弯症の代表例として神経筋疾患、アーノルドキアリ奇形、レックリングハウゼン病、マルファン症候群、筋ジストロフィー、ソトス症候群などがある。特発性側弯症は発生時期により乳幼児、学童期、思春期に分類され思春期が最も多い。特発性は明らかな原因は不明であるが 遺伝的要因と環境要因がある。家族内発生は10-30%程度を占めており関連する遺伝はLBX1、GPR126、BCN2、PAX1などが挙げられる。環境因子としては家族歴(母親が側弯)、スポーツ(クラシックバレー)、BMI低値などがある。側弯症の自然経過は成長期とともに進行し、成長停止とともに側弯進行は停止する。しかし大きなカーブを伴う側弯は成長停止後も進行しうる。女性は思春期開始(約10歳弱)とともに成長率は上昇し初潮(約12歳)は成長率のピークを過ぎてからである。初潮から成人身長までの伸びは5-6cmと言われている。一方男性は思春期開始時(11歳6ヶ月)には成長率は上昇しておらず約13歳頃に成長率のピークを迎える。声変わりは成長率のピークを過ぎた頃である。Risser signは骨年齢を反映するレントゲン指標の1つである。側弯症の治療としてはギプス、コルセット、手術の3つがある。Risser、カーブの大きさは治療選択の指標となる。 コルセットによる治療はBrAIST studyで装着時間12時間以上での有効性が示されている。カーブが大きい側弯の手術は術後合併症が多く手術侵襲が大きく骨盤もふくめた固定を検討する必要がでてくるため手術の早期介入が重要である。学校検診の問題については地域により発見率の差がある。その背景として健診方法が各地域や学校任せになっていること、視触診のみの検査であり信頼性が低いことなどが挙げられる。検査機器を用いた側弯症健診の仕組みを構築するためのモデル事業を各自治体で行われる予定である。

演題2 医療安全対策について

豊田厚生病院 金山康秀 先生

医療安全とは、医療事故や紛争を起こさないための方策とともに、医療事故や紛争が起きた場合の対応策に取り組むことである。1990年代において、医療事故はあってはならないものであり個人が注意すれば防ぐことができるとされてきたが、2000年以降、医療事故は起こりえるものでありチームや組織全体の在り方を改善しなければ防止できないという認識となっている。カルテの記載内容は係争案件が発生したときに重要な書類となるため、開示を前提とした記載を心掛ける必要がある。インシデントレポートは、係争案件に発展する可能性のある事象を察知するための重要なレポートであり、医療安全が速やかに介入することで、自分の身を守ることにつながる。そのため、可能な限りタイムリーに記載した方が良い。