2024年12月13日、名古屋整形外科セミナーを開催しました。
まず、名城病院 整形外科・脊椎脊髄センター 整形外科医長 岩沢太司先生から、講演「当院における思春期特発性側弯に対しての加療方法 ~装具加療を中心に~」がありました。
構築性側弯症のうち最も多い思春期特発性側弯症のはっきりした原因はまだわかっていない。痛みのないバランスが取れた脊椎が治療のゴールである。手術も完全ではなく保存治療も重要。回旋矯正に主眼をおいたシェノー装具を用いている。服装の選択自由度が大きく、自分で着脱できる利点があり、満足度もよりよい。しかし身体的・精神的負担はあり、過剰治療の回避も重要である。
特別講演講師に獨協医科大学 整形外科 准教授 高畑雅彦先生をお招きし、ご講演「バリューベース・ケアという新たな視点から考える整形外科診療 ―脊柱靱帯骨化症患者の痛み、しびれへの取り組みから―」を賜りました。
環境の変化は新たな視点で新たなことに挑戦できる機会。EBMは医師主導的であるが、バリューベースドヘルスケアは患者中心の「患者が良かったと思える」医療を指す(海外では「掛けたお金に見合う治療だったか」という捉え方もある)。患者のニーズを把握するために、研究に患者や市民が参画するPPIが重要。後縦靱帯骨化症患者会に参加してもらった研究では、手術によって痛みやしびれが全く改善しない症例も多く、投薬によっても改善していない現実が浮き彫りになった。肥満と靱帯骨化症の関係では、近年縦断研究の結果が示されている。遺伝学的にも肥満と胸椎後縦靭帯骨化症の関連は深いことがわかった。また、アディポネクチンとレプチンの比が悪化することが骨化と関連している。肥満の治療が靱帯骨化症治療につながる可能性。肥満関連健康障害を抑制するためには3~5%の体重減少による代謝環境の改善が有効で、靱帯骨化症でも同様の効果が見込めないか研究中である。
多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。