股関節班竹上靖彦が第30回日本整形外科学会基礎学術集会において優秀演題賞を受賞

日本整形外科基礎学術集会優秀演題賞を受賞して

【氏名】竹上 靖彦 【所属】股関節班

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平成27年10月22日、23日に富山国際会議場で開催されました日本整形外科学会基礎学術集会において優秀演題賞を受賞いたしましたのでご報告申し上げます。
研究タイトルは、「R-spondin2はWnt/β-cateninシグナル経路を介して軟骨細胞の分化と細胞外マトリックス形成を制御する」です。

Wntシグナルは発生過程の多くの現象や疾患の発生に関与しています。骨格形成に必須の過程である内軟骨性骨化でもその関与が近年多数報告されています。
R-spondin2(以下Rspo2)は分泌タンパク質であり、Wntリガンドとは全く異なる機序で、Wnt/-cateninシグナル経路を活性化させます。今までにRspo2のノックアウトマウスやin situ hybridizationによってRspo2と軟骨細胞の分化増殖が関連することは示唆されていましたが詳細な検討はなされていませんでした。また近年Rspo2は後縦靭帯骨化症(OPLL)やデュプイトレン拘縮、変形性関節症といった骨軟骨、靭帯や腱由来の疾患との関連が指摘されています。本研究ではそのRspo2と軟骨細胞との関連についてまずRspo2ノックアウトマウスを用い、個体レベルでのRspo2の軟骨分化における働きを明らかにしました。また軟骨前駆細胞株として広く用いられているATDC5を用いて軟骨分化に関わる遺伝子発現を検討し、Rspo2が遺伝子レベルでもその発現に影響を与えていることを示しました。加えてRspo2がどのようにWntシグナル経路を経由して軟骨細胞の分化増殖に関わっているかを明らかにしました。

今後の研究の展開として、高齢者の運動障害の主要な原因である変形性関節症とRspo2の関連を明らかにし、Rspo2をターゲットとした変形性関節症の病態制御を目指すとともに、Rspo2と協同で働くタンパクの軟骨での働きについても検討を行っていきたいと考えています。

最後になりましたがこの研究を直接ご指導して下さった名古屋大学大学院医学系研究科神経遺伝学教室の大河原美静先生と大野欽司教授、ならびに僕のような人間に基礎研究のチャンスを与えて下さった中島宏彰先生と石黒直樹教授に感謝申し上げます。