手の疾患

手の疾患

橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)

転倒や仕事中のケガなどで様々な腕の骨折が生じます。その中でもっとも多いのは手首付近の骨折です。骨粗鬆症が存在していると生じやすい骨折の代表です(高齢者に多い)。変形を生じないようにギプス固定を行いますが、ずれの大きいや骨折部分が不安定な場合には、プレート(金属)で固定をする手術を行います。

三角線維軟骨複合体(TFCC)損傷 (さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)

手関節の小指側にはTFCCと呼ばれる靭帯と軟骨からなる組織があり、転倒して手を付いた際に損傷して痛みの原因となることがあります。通常は装具(サポーター)を用いて治療しますが、MRIや関節鏡で評価し、必要に応じて手術(縫合術または再建術)を行っています。

Q1 どのような治療を行っていますか?
A1 損傷時期によっても異なりますが、まずはサポーターなどの手関節装具を用いて保存的治療を行います。保存的治療で症状の改善が見られない場合に手術治療を検討します。手術では始めに手関節鏡を行いTFCCの状態を観察し、変性所見が無く断裂のみであれば縫合術を行い、変性所見が主で縫合が困難な場合は尺骨短縮術を行っています。
Q2  手術後は患肢をどの程度使えますか?
A2 TFCC縫合術後も尺骨短縮術後もギプスで前腕から手まで約1ヶ月間固定します。その後は手関節装具に変更し、さらに2~3ヶ月は固定を行います。その間は重労働やスポーツは原則禁止となりますが、手指はギプス中から動かせるため、軽作業やデスクワークは術後1ヶ月以内に復帰可能です。

腕神経叢損傷(わんしんけいそうそんしょう)

バイクによる事故や分娩時の牽引により生じることがあります。腕神経叢とは頚椎(くび)から腋窩(わき)にかけて、肩から指に至る神経が複雑に絡まるような構造をしており、損傷すると肩・肘・指の運動機能と感覚が障害されます。 主に運動機能の再建を神経移行・移植術や、遊離筋肉移植を行って再建しています。肘から先の神経障害については神経縫合・移植術を行って機能再建を図りますが、神経の回復が得られない場合には腱移行術といい、他の部分を動かす腱を用いて運動機能を再建します。

切断指

指が切断された場合、再接着といって断裂した部位をつなぎ合わせる手術を行います。文字通り元通りの組織を修復していきますが、場合によっては犠牲にせざるを得ない部分が生じ、また断裂した部分の状態が悪いと再接着自体が不可能となります。再接着を行えた場合、つないだだけで治療が終わるわけではなく、手術後のリハビリテーションをはじめとする後療法が重要となります。

変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう)

指の関節(いわゆる第一関節と第二関節)には変形性関節症が生じます。様々な要因(体質・使用状況・外傷の既往)によって生じますが、その生じる原因は不明で予防する有効な手段はありません。治療は人工関節置換術や関節固定術を行っています。母指CM関節(母指の付け根の関節)にも同様に変形性関節症が生じます。母指については関節形成・関節固定などの手術があります。手関節(手首)にも変形性関節症が生じます。関節形成手術や部分固定術などを行います。

手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手首で起こる絞扼性神経障害(こうやくせいしんけいしょうがい)です。正中神経(親指から環指の半分・掌側の感覚と母指の付け根の筋肉を支配している神経)が通過するトンネルが狭いために起こります。特徴的なものは上記部位のしびれ・痛みで、明け方や起床時に症状が強くなることが多いです。進行すると母指の付け根の筋肉がやせて、物がつかみにくくなります。女性に多く、妊娠・出産・閉経との関連も認められ、また手を多く使用する方に発症しやすいといわれています。腱鞘炎や糖尿病との関連も認められます。 治療は手の安静と内服、ブロック注射や手術(狭いトンネルを解放する)となります。当施設では内視鏡を用いて手術を行っています。

拘縮(こうしゅく)

一旦ケガなどで組織の損傷を受けるとその部位に瘢痕が形成されます。瘢痕は元の組織に比べると柔軟性がないため、関節周囲の損傷により形成された瘢痕(はんこん)によって関節の動きが障害される(かたくなる)ことがあります。このような状態を拘縮といいます。近年増加傾向にあるもので外傷に関連しない拘縮に、デュピュイトラン拘縮という指を伸ばせなくなる疾患があります。原因ははっきりしていませんが高齢の男性に多く発症します。