膝関節
膝靭帯損傷(ひざじんたいそんしょう)
前十字靭帯損傷(ぜんじゅうじじんたいそんしょう)はサッカー、バスケットボール、スキー等のスポーツでの損傷が多く、方向転換やジャンプの着地の際に起こります。
受傷後しばらくすると動けますが、翌日には膝関節の中に血液が溜まり、腫れと痛みで歩行が困難になることがほとんどです。
十字靭帯の損傷は自然に修復されにくく、一方で手術による治療成績がよいことから靭帯再建手術が広く行われています。当院でも関節鏡を使用して元の靭帯により近づくように解剖学的二重束再建術を行い、良好な結果を得ております。 また転倒や交通事故による受傷の多い後十字靭帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)に対しても関節鏡を用いた解剖学的二重束再建術を行っております。
- Q1 前十字靭帯損傷ってなんですか?
- A1 前十字靭帯は太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)をつなぐ紐(靭帯)で、膝関節を安定化させ、脛骨が前方へずれるのを防ぎます。前十字靭帯はスポ-ツにより損傷することが多く、サッカーやバスケットボールでの急激な方向転換、バレーボールでのジャンプからの着地、ラグビーや格闘技で強制的に関節を曲げられた時などに、膝に過度な負担がかかることで損傷します。受傷時には膝の中で「ブチッ」と音がして、なんとか歩くことはできますがスポ-ツの続行は難しくなる事が多いです。前十字靭帯が損傷すると膝の安定性が失われるため、歩行やスポ-ツの際の痛みや膝くずれ(膝がガクッとする)を感じるようになります。
- Q2 どんな治療法があるのですか?
- A2 前十字靭帯は自然治癒することはほとんどありません。そのため何らかの手段で失われた靭帯の機能を補うことが治療の目的となります。保存治療では膝周りの筋肉を鍛えたり装具を使用したりして、日常生活やレクリエーション程度のスポーツ復帰を目指します。しかし保存治療には限界があり、ハイレベルなスポ-ツ復帰のためには靭帯を作り直す(再建する)手術治療が行われる事が多いです。手術法はいろいろありますが、当院ではハムストリング腱(太ももの裏にある筋肉の腱)を用いた解剖学的二重束再建術を行っています。
- Q3 手術した場合、どれくらいでスポ-ツに復帰できますか?
- A3 スポ-ツの種目にもよりますが、6~10か月ほどで復帰してもらう事が多いです。手術の時の入院は2週間程度ですが、その後も装具とリハビリは必要です。リハビリの進み具合をみながら月ごとに少しずつ運動を許可していき、6か月以降で元のスポ-ツへの復帰となります。再建した靭帯は一旦弱くなって再び強くなるという特徴があるため、これより早く復帰する事はおすすめできません。
離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)
関節の軟骨と骨の一部がはがれてくる疾患で、スポーツによる繰り返しの刺激などで起こると言われています(他にも諸説あり)。運動中の痛みで発症することが多く、進行すると傷んだ軟骨がはがれて関節内の遊離体(動き回るので「関節ねずみ」とも表現されます)となり、関節の動きが悪くなる原因となります。 レントゲンやMRIで傷んだ軟骨部分を評価して、吸収期、分離期、遊離期に分類します。それぞれの病期に合わせて保存治療(手術を行わない)か手術治療(ドリリング、切除、固定、骨軟骨柱移植など)を選択しています。
膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)
恒久性(生まれつき脱臼している)、習慣性(膝を曲げると脱臼する)、反復性(予期せず脱臼して繰り返す)、外傷性(ケガが原因で脱臼する)があります。若い女性に多く、骨の形態異常、膝関節周囲の筋力のバランス、膝蓋大腿靭帯を含む軟部組織の障害、下肢の形態異常(X脚など)のさまざまな要因が関連します。 症状として脱臼による痛み、違和感、不安感などがあり、その程度によってサポーター装着や筋力トレーニングなどによる保存治療(手術を行わない)か、手術治療かを選択しています。手術方法は脱臼の要因に応じて、内側膝蓋大腿靭帯再建術、脛骨粗面骨切り術、膝蓋外側支帯切離術、膝蓋腱移行術などから選択して行っています。
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)
加齢により膝関節の軟骨がすり減り、関節が変形してくる疾患で、患者数は国内だけでも700万人いると言われています。ケガ(膝靭帯損傷、骨折など)の後で発症することもあります。膝関節の変形が進むと脚の変形(O脚が多い)が目立つようになり、痛みのために歩きにくくなってきます。 治療として、内服薬、湿布、リハビリテーション、サポーターや足底板などの装具、ヒアルロン酸などの関節内注射などの保存治療、また脛骨高位骨切り術や人工関節置換術などの手術治療があります。脛骨高位骨切り術は運動耐用性が高いので、比較的若く活動性の高い人に行い、そうでない人には除痛効果の高い人工膝関節置換術をおこなっています。
- Q1 どのような疾患でしょうか?
- A1 正常な膝関節の表面は軟骨で覆われていますが、加齢に伴い、その軟骨の摩耗が少しずつ進行します。進行に従い軟骨および半月板の変性による関節炎が生じ、痛みや曲げ伸ばしの制限がおきたり、水が関節に貯まったりします。さらに進行すると関節周囲の骨がトゲのように盛り上がったり、軟骨の下の骨が露出して骨自体が変形します。このような変形により強い痛みが生じ、生活の質が大きく損なわれます。
- Q2 変形を進行させないために何か気を付けることはありますか?
- A2 できるだけ膝に負担をかけない事が大事です。正座や和式トイレをなるべく避けたり、肥満にならないように注意しましょう。また、太ももの筋力はとても重要なので、適度な運動(歩行)や筋力を維持するための体操などを毎日少しずつしてみると良いでしょう
- Q3 脛骨高位骨切り術と人工膝関節置換術とはどう違うのですか?
- A3 変形性膝関節症が進むとO脚変形となり、膝の内側ばかり体重の負担がかかるようになるため、特に膝の内側が痛むことが多くなります。脛骨高位骨切り術では、O脚を矯正することで膝の内側にかかる負担を減らし、痛みを減らします。この手術では自分の骨が残るため、耐用性が高くスポーツを続けることも可能であり、比較的若くて運動希望のある患者さんに対して行います。ただし、負担を膝の外側に移すため、変形が進行した患者さんには適応になりません。一方、人工膝関節置換術は変形した骨の表面を切り取って、代わりに金属とポリエチレンでできた人工関節を入れる手術です。こちらは変形が進んだ患者さんにも適応があります。