腫瘍

腫瘍

骨肉腫(こつにくしゅ)

骨原発の悪性腫瘍で最も多く、10歳代から20歳代の膝周囲に好発します。通常型骨肉腫は高悪性度で、外来を受診した時にはすでに隠れた転移があると言われ、抗がん剤→手術(広範切除)→抗がん剤の順序で治療をします。従来は切断しても5年生存率は10~15%でしたが、現在では化学療法と手術技術の進歩により、5年生存率が70~80%で患肢温存率は80%以上となっています。

広範切除後の再建は人工関節が一般的ですが、当院では加温処理骨と血管柄付き骨移植の併用やclavicula-prohumero(有茎鎖骨移植)など自分の骨による生物学的再建を積極的に行っています。JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)が行う日本全体の多施設共同臨床試験に基づいて治療を行っています。

ユーイング肉腫

小児の骨原発悪性腫瘍では骨肉腫に次いで多く発生します。10歳以下から20歳代の腕や脚の骨の骨幹部(骨の中央部分)や体幹部(骨盤、肩甲骨、背骨)に好発します。症状は痛みと腫れですが、発熱を伴うこともあります。

化学療法と手術による切除での治療が基本ですが、手術が困難な場合は放射線治療を選択することがあります。化学療法と放射線治療の効果が非常に高く、集学的治療(いくつかの治療法を組み合わせて行うこと)により治癒が期待できる腫瘍となってきています。

軟骨肉腫(なんこつにくしゅ)

軟骨肉腫は骨肉腫に次いで多い原発性悪性骨腫瘍です。発生年齢は骨肉腫より高く中高年に多くみられます。大腿骨(もも)、上腕骨(にのうで)や骨盤などに好発し、骨肉腫と比較してゆっくりと進行することが多いのが特徴です。

化学療法や放射線治療が効きにくいため、手術による病変の切除が治療の第一選択となります。当院では病変の部位、大きさ、悪性度、合併症を考慮して、手術適応を決定しています。手術による切除が困難な場合、切除による機能障害が大きい場合は手術の代替治療として重粒子線照射(放射線治療法のひとつ)を行うこともあります。

軟部肉腫(なんぶにくしゅ)

悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の組織型別頻度は組織型の種類が非常に多く、その中でも多いのは脂肪肉腫、平滑筋肉腫、未分化多形肉腫、滑膜肉腫などです。軟部肉腫の多くは中高年に発生しますが、滑膜肉腫は比較的若年にも好発します。

軟部肉腫の標準的治療は手術で、腫瘍と周囲の健常組織を含めた広範切除術を行います。切除した欠損部の再建のために、形成外科的再建術(筋皮弁、植皮など)が必要となることがあります。

軟部肉腫に対する補助化学療法の適応については議論がありますが、当院では直径が5㎝より大きく、悪性度の高い軟部肉腫に対して補助化学療法を実施しています。また、各所に発生する軟部肉腫の切除と再建を他科(形成外科、外科、呼吸器外科、耳鼻科など)の腫瘍専門家と協力することで適切に行うよう努めています。

横紋筋肉腫(おうもんきんにくしゅ)

小児に発生する代表的な悪性軟部腫瘍です。新生児から小児期に多く発生し、頭頸部が最も多く、次いで泌尿生殖器や四肢(腕、脚)に発生します。急速に増大する腫瘤(しこり)として発症します。リンパ節転移や肺転移を起こすことが多い腫瘍です。組織型は胎児型・胞巣型・多形型に大別されています。その年齢・発生部位・大きさ・組織型・転移の有無などにより、予後は大きく異なり、それらに対する治療体系が確立されつつあります。小児科・整形外科・放射線科で連携をとり治療にあたることが必須です。

当院では日本横紋筋肉腫スタディグループの標準的治療体系に従い、リンパ節生検もしくは郭清と放射線治療の併用を積極的に行っています。

色素性絨毛結節性滑膜炎(しきそせいじゅうもうけっせつせいかつまくえん)

膝に多く発症する疾患で、股、足首、肘、肩などにも発症します。最近、遺伝子の異常が報告され「○○炎」という名称ですが、炎症ではなく腫瘍と考えられます。標準的治療は手術による切除です。悪性であることはきわめてまれですが、良性であるにもかかわらず高い術後再発率を特徴とします。関節に発症することから関節機能の低下が問題となります。

当院では、病変の部位に応じて関節鏡を使用したり、大きく展開してから切除をするなど、術後の機能損失を最小限にするように術式の工夫をしています。