名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長 石黒 直樹)整形外科学の大田剛広医員、西田佳弘准教授らの研究グループは保険適応のある医療材料(リゾビスト®、リジェノス®)を組み合わせた温熱刺激によりラットおよびウサギ動物モデルにおいて骨形成が促進されることを明らかにしました。
骨腫瘍切除後や骨折、感染などによって骨欠損が生じた場合には自家骨移植を初めとした様々な治療が行われますが、骨癒合を早めるための効果的な方法が求められています。我々は過去にアルジネートゲルとリポソームを用いた単回の温熱刺激により骨形成が促進されることを明らかにしましたが、臨床で使用するためにはヒトで使用が認められている材料を用いて骨形成が促進することを明らかにすることが効果的です。ラットとウサギによる脛骨骨欠損モデルを作成、保険適応のある医療材料を移植し、交番磁場下に45度、15分間加温刺激することによる骨形成をMicro-CTと組織学的に評価し、2種類の細胞株(MC3T3,ATDC5)において温熱刺激による骨分化能を評価しました。その結果、両動物モデルにおいて週一回の温熱刺激が刺激開始後2週、4週時点ともに骨形成を促進することが示されました。対照的に週三回の温熱刺激は治療開始後2週、4週時点とも骨形成を促進しませんでした。また、MC3T3細胞株は温熱刺激によりALPの発現が亢進しましたが、ATDC5では明らかな変化を認めませんでした。
- 保険適応のある医療材料を用いた温熱刺激によって骨形成が促進される
- 複数の動物種で効果が確認された
- 45度15分、週一回の繰り返し温熱刺激が骨形成促進に効果的である
- 温熱刺激は骨芽細胞を介して骨形成を促進する
本研究より、臨床応用可能な材料を用いた温熱刺激が骨芽細胞を介して骨形成を促進することが示され、骨欠損に対する有効な治療の選択肢になる可能性が示されました。本研究成果は、国際科学誌「PLOS ONE」( 現地時間2017年7月18日付けの電子版)に掲載されました。
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「名大整形トピックス:研究成果」-「保険適応のある医療材料を用いた温熱刺激による新規骨形成促進法」