2024年4月 合同カンファレンス報告

2024年4月4日(木)、合同カンファレンスをweb開催しました。名古屋大学の三島健一先生の司会により、専攻医による4例の症例提示と名古屋医療センターよりご講演がありました。

合同カンファレンス記録 (文責:大出幸史、杉浦喬也)
日時:2024年4月4日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 三島健一 先生

症例1 鎖骨骨幹部骨折に対するfull thread screwによる髄内スクリュー固定法

豊橋市民病院 福岡大史 先生

転位のある鎖骨骨幹部骨折に対する手術法として、髄内螺子固定はプレートよりも低侵襲で鋼線より強固な固定法である。従来の長いcannulated cancellous screw(CCS)はpartial thread screwであり、骨片のスライディングが問題であった。我々はfull thread screwを使用し固定性の向上を計っている。

症例2 両側floating kneeをきたしたgustilo Ⅲbの症例

名古屋医療センター 平良俊樹 先生

症例は46歳女性。高所から転落、その後車に轢かれて受傷し当院へ搬送。来院時、出血性ショックを認め、画像検査で右大腿骨骨幹部開放骨折gustiloⅢa、左大腿骨骨幹部開放骨折gustiloⅢc、左大腿部デグロービング損傷、右脛骨骨幹部骨折gustiloⅡ、左脛骨近位部開放骨折gustiloⅢa、骨盤輪骨折、腰椎破裂骨折を認めた。

症例3 アキレス腱断裂後の仕事復帰に関する記述的研究

長野赤十字病院 西郷峻資 先生

アキレス腱断裂は最も一般的な下肢外傷のひとつとされる。回復後も疼痛や不安定性により機能障害が長引く可能性がありアキレス腱断裂後の職場復帰については大きな関心を集めるところである。本研究ではアキレス腱断裂後の職場復帰不能症例について関連する因子を調査し考察した。

症例4 内山法 VS PARS System アキレス腱断裂手術における短期成績の比較

JCHO新宿メディカルセンター 荒川旺紀 先生

アキレス腱断裂に対する治療法は現在も確立されたものがなく、比較検討が繰り返されている。内山法によるアキレス腱縫合は本邦では広く用いられている手術法であるが、他の手術法との比較検討は不十分である。当院ではArthlex社のAchilles PARS Suture Tape Implant System(以下PARS Systemとする)を導入し、低侵襲で、強固な縫合を試みている。

講演1 名古屋医療センターの現状 ―リウマチ 人工関節 外傷―

名古屋医療センター 浅井信之 先生

名古屋医療センターでは常勤医5名 専攻医5名が在籍している。当院は立地がよくアクセスがよく、またオペ室の機動力が高く整形外科にとって働きやすい環境である。整形専属のNPが在籍しており、外傷患者のマネジメントや各科との連携も行っている。NPの権限は病院ごとにばらつきはあるが当院では他の病院よりも広く権限を持っている。また医師にとって休暇が取りやすい環境であり推奨している。当院ではリウマチ人工関節外傷の三本柱を特色としている。リウマチに関しては専門医が4名在籍しており、リウマチ患者数は1000名通院している。膠原病内科もあるが、棲み分けもなくお互いに連携している。整形外科からはRA以外の膠原病の精査を頼むこともあり内科からは関節症状についての整形外科的治療について相談を受けておりリウマチ診療にとっていい環境である。人工関節は年間THA72例 TKA/UKA100例 TEA6例行っている。RAは薬物治療の発展もありRA患者はそのうち5%である。待機期間は2ヶ月で入院期間は平均2週間で退院している。股関節に関しては比較的血液疾患などPSLを使っている患者が多く骨頭壊死の患者がおおい。また脱臼リスクの高い患者も多く脊椎アライメントを評価し、三次元計画ARナビゲーションを用いて行っている。アプローチはALSアプローチを採用している。膝に関してはまずはUKAを行えないか検討し、MCLの拘縮を起こしていないなど適応を定めてUKAをまずは検討している。ポータブルナビゲーションや関節周囲カクテル注射を用いている。周術期の対応などに関しても日々アップデートしている。RA患者に対するノウハウを生かして高齢者の外傷症例にも適応している。当院は三次救急であり患者数は多く特色として年間骨盤骨折12例、インプラント周囲骨折10例の手術を行っている。骨盤骨折に関しては交通外傷や墜落外傷のみならず高齢者にも積極的に手術を行っている。人工関節周囲骨折は人工関節の増加とともに増加していると考えられる。関節外科医と外傷外科医の知識がともに必要であり、そのノウハウを生かして対応している。

講演2 岡山短期留学の報告と当院の外傷治療

名古屋医療センター 家崎雄介 先生

名古屋医療センターの外傷について紹介、主に骨盤骨折について述べる。Spinopelvic固定を必要とした16歳男性、直腸断裂があり難渋した51歳男性を提示し、一般的なものからHigh-energy「外傷」についての取り組みを紹介した。さらなる勉強のために岡山大学へ行き、骨盤骨折を含め外傷治療について学んだ。関連病院に出向き数多くの症例を経験した。そこで外傷カンファレンスの存在に感銘を受け、名古屋大学における若手カンファレスの実施に取り組み、2023年8月に発足し、症例を提示しながら「切磋琢磨」を心掛けている。

最近の受賞

当教室の最近の受賞です。おめでとうございます!

石黒 直樹
令和5年度日本整形外科学会 学術賞
学術賞は多年にわたる研究により整形外科学の発展に顕著な貢献をしたものに授与されます。

酒井 智久
第7回日本サルコーマ治療研究学会学術集会 優秀演題賞
「当院のがん診療における希少がん・肉腫の頻度、肉腫の詳細の検討 ―RareCare分類を用いた解析―」

山内 一平
日本脊椎前方側方進入手術学会(JALAS)第10回記念大会 最優秀演題賞
「腰仙移行部前方固定の適応とその術後成績」

2023年度野球部活動報告

今年度より名古屋大学整形外科野球部のキャプテンを拝命致しました、平成28年卒の杉本遼介と申します。昨年予選敗退となった悔しさをバネに新チームとして始動しております。

日本整形外科学会親善野球大会の東海地区予選会が2023年9月から10月にかけて行われました。本戦への出場権(1枠)をかけて名古屋大学、名古屋市立大学、藤田医科大学、三重大学、岐阜大学、浜松医科大学の6校が参加し熱戦が繰り広げられました。

名古屋大学は、準決勝では大山先生(平成30年卒)の特大ホームランが飛びだすなど、岐阜大学に8-1で勝利しました。決勝は昨年惜しくも敗れた名古屋市立大学と対戦し、終始手に汗を握る展開でしたが、竹本先生(平成21年卒)のタイムリーによる貴重な一点を下田先生(令和3年卒)の無失点ピッチングで守りきり、1-0で勝利しました。

5月に行われる日本整形外科学会親善野球大会の本選でもチーム一丸となって戦ってまいりますので、今後とも応援のほどよろしくお願いいたします。

2024年3月14日 Tsurumai Orthopaedics Expert Seminarを開催しました

2024年3月14日、Tsurumai Orthopaedics Expert Seminarを開催しました。

名城病院 整形外科・脊椎脊髄センター長 町野正明先生から、ご講演「胸腰椎・腰椎思春期特発性側弯症に対する選択的腰椎固定術の適応と限界」がありました。
特発性脊柱側弯症は成人になり進行する症例があり、思春期に外科的治療を適切に検討し手術をする際にはmotion segmentを残すことが重要。カーブの頂椎が低い症例、側屈X線検査でL4/5tiltが10度以上残る症例や側方辷りのある症例では本術式適応の限界がある。

講師には金沢大学医薬保健研究域医学系 整形外科学 教授 出村諭先生をお招きし、ご講演「脊柱変形・脊椎腫瘍に対する治療と疼痛コントロール」を賜りました。
原発性脊椎腫瘍は頻度は低いがときどき出会う疾患である。脊椎腫瘍と骨粗鬆症性椎体骨折の判断は難しいときもある。脊椎転移は多い。癌治療の著しい進歩によって生命予後は延長しており、従来のスコアリングでは対応が難しくなってきている。TESは良好な局所コントロールが可能だが、放射線治療の既往と、髄液漏や感染といった合併症の関連がある。局所冷凍焼灼などの新たな手法の研究を行っている。
側弯症は健診による早期発見を目指したい。レントゲンでは重金属フィルタを用いると被曝線量を減少できる。CT撮影でも線量を減らす工夫ができるようになってきた。
成人脊柱変形の治療では投薬も重要。広範囲固定ではインストゥルメントの緩みや偽関節は大きな問題で、骨粗鬆症治療もきちんと行うことが重要である。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。

2024年3月12日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年3月12日、名古屋整形外科セミナーを開催しました。

中部労災病院整形外科 副部長 神原俊輔先生から、ご講演「脊椎と利き足 ~ボールはどっちで蹴りますか~」がありました。
利き手、効き目に比較し、利き足の再現性は低い。最も再現性が高いのは「的に向かってボールを蹴る方の足」。109例の調査にて、92.7%が右利き手、90%が右利き足であった。日常生活での繰り返し負荷によって、60歳ころから利き足側のL5/S椎間関節変性が発生か?という考察ができる。

講師には自治医科大学整形外科 教授 竹下克志先生をお招きし、ご講演「神経障害性疼痛と腰痛を紐解く ~ミロガバリンのエビデンスへの期待~」を賜りました。
機能性神経障害とは? 身体表現性障害としての麻痺などの障害が存在する。きっかけや原因がないこともあるが、なんらかのできごとをきっかけに起こることがあり、心理的ストレス、感情コントロール、痛み閾値低下などが関与している。手術も当てはまる。
侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、痛覚変調性疼痛。脊椎関連慢性疼痛は神経障害性疼痛が多い。慢性腰痛に対して薬物治療より運動療法の方が注目されている。慢性腰痛と運動習慣は関連する。続けることが難しい。また、肥満はアディポカインなどを通じ慢性炎症から疼痛に関連する。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。

2024年3月8日 鶴舞小児整形セミナーを開催しました

2024年3月8日に鶴舞小児整形セミナーを開催しました。

講師には川崎医科大学骨・関節整形外科学主任教授の三谷茂先生をお招きし、「DDHの早期診断と治療」と題したご講演を賜りました。DDHの検診の状況、DDHの診断、外来での治療、さらには診断・治療開始遅延まで岡山県や愛知県を含めた全国や海外の状況もご提示いただきながらお話しいただきました。生後3-4カ月には確実に治療開始するために、検診には所見に加えて問診が重要であること、気になる点があれば画像診断(できればエコー検査)を行う必要性を、わかりやすくご教授いただきました。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。

2024年2月28日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年2月28日に名古屋整形外科セミナーを開催しました。

講師には帝京大学医学部付属溝口病院 整形外科 教授 安井哲郎先生をお招きし、「昨今の足外科診療 ~リウマチ足を含めて~」と題してご講演を賜りました。
足手術の歴史から現在行われている治療法をわかりやすくご解説いただきました。また足疾患として我々が知っておくべき強剛母趾、足根骨癒合症についてもお示ししていただき、今後の診療に役立つ貴重な御講演でした。

沢山の方にご参加いただき誠にありがとうございました。

2024年2月 合同カンファレンス報告

2024年2月15日(木)、合同カンファレンスをweb開催しましたので、ご報告いたします。名古屋大学の浅井秀司先生の司会により、専攻医による4例の症例提示と稲沢市民病院よりご講演がありました。

合同カンファレンス記録 (文責:吉田和樹、山本浩登)
日時:2024年2月15日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 浅井秀司 先生

症例1 上腕骨近位端骨折術後に肩関節後方脱臼を生じた一例

名古屋掖済会病院  吉本裕哉 先生

症例は34歳男性でロードバイク走行中に単独事故で受傷した。受傷1日目に近医より当院紹介受診となり、左上腕骨近位端骨折4part、左肩甲骨骨折の診断にて前者に対し、受傷後7日目に小結節、大結節骨片を整復した上で、骨接合(プレート固定)を施行した。

症例2 コンパートメント症候群疑いで紹介となったカルシフィラキシスの一例

トヨタ記念病院 根東竜 先生

症例は既往に糖尿病と慢性腎不全で血液透析をしている78歳の男性。当院受診8日前に転倒し、徐々に下腿部の腫脹と疼痛が増悪。足関節部の水疱や末梢のチアノーゼを疑う所見があり、コンパートメント症候群の疑いで紹介受診となった。

症例3 小児大腿骨骨病変の2症例

岡崎市民病院 北出怜司 先生

小児大腿骨に浮腫像を認めた2症例を経験したので報告する。症例1:10歳女児で特記すべき既往歴認めない。受診2か月前より誘因なく左大腿骨遠位内側部に疼痛出現した。

症例4 スポーツ中に生じた膝蓋腱断裂の一例

西尾市民病院 鈴木崇弘 先生

症例は45歳男性、バスケットボールの試合中にジャンプし着地した際に左膝痛を認め歩行困難となった。当院初診時の身体所見は左膝関節軽度屈曲位で伸展時に膝蓋骨周囲に疼痛を認め、左膝蓋腱は触知できず膝蓋腱部に陥凹を認めた。

講演 転倒骨折センター開設について

稲沢市民病院 須田光 先生

骨折を起こした高齢者が入院した際に退院まで他職種で介入するためにR4/10/3に転倒骨折センターを開設したのでその概要について述べる。高齢化が問題になっているが、稲沢市も65歳以上30%、75歳以上13%と高齢化が進んでおり、当院入院患者も7割以上が65歳以上、半分以上が75歳以上である。患者の7割が半径3km以内であり、今後近隣住民の骨折も増えると予想され、それらを受け入れるプロジェクトとして、骨粗鬆症性骨折治療を中心として。骨折予防指導や地域連携の強化も目指して開設された。年間500件弱の手術件数のうち下肢の骨折の半数以上が大腿骨近位部骨折、上肢の骨折の半数弱が橈骨遠位端骨折である。既存病棟を改修し、病棟内にリハビリや栄養相談、レクリエーションを行えるスペースなどを確保し、ワンフロアで完結できるようにした。循環器、内分泌、老年内科などとこれまで以上に連携を強化している。入院前の生活に戻れるよう入院時からサポートし、治療・アフターケア・予防の三位一体の治療を目指して他職種連携を行なっている。スマートベッドなどを導入し、ナースステーションで患者さんがどんな状態かモニター上にて一覧で確認できるようになっている。眠りスキャンで睡眠の状態なども確認できる。ベッドサイドのモニターでもバイタルなどのデータが入力できる。画面を切り替えると安静度や転倒リスクなども表示できるようになっており看護師サイドからの評価は高い。転倒の減少などの効果ついてはこれから検討が必要と考える。中規模病院であり整形外科常勤2人、看護師・PT・OTが不足、呼吸器内科常勤医不在、心エコーがなかなかできない、平日夜間は1人全科当直など大変な体制ではあるが、地域住民の治療が市民病院で完結できるよう今後も取り組んでいく。

2024年2月20日 Nagoya Orthopedics Expert Seminarを開催しました

2024年2月20日、Nagoya Orthopedics Expert Seminarを開催しました。

講師には岡山大学整形外科学教室 主任教授 尾崎敏文先生をお招きし、「痛みの診断と治療〜骨・軟部腫瘍治療と最近の発展〜」と題してご講演を賜りました。骨軟部腫瘍の診療・臨床研究についてのみならず、AIやデジタルトランスフォーメーションの医療への活用など、最新の知見を含めご教授頂きました。

沢山の方にご参加頂き誠に有難うございました。

Expertscape:Expertise in Spineのご案内

今釜教授は「expertscape」に「2013年~2023年脊椎分野の国内No.1 expert」として掲載されています。さらに、名大整形外科・脊椎班はtop10に4名ランクインしています。

Expertscapeは世界のさまざまな分野のエキスパートを紹介するサイトで、過去10年間の論文等によってランキングされています。