2025年1月28日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2025年1月28日に名古屋整形外科セミナーを開催しました。

講師には聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 病院長 原口 直樹先生をお招きし、「変形性足関節症に対する関節温存手術 ~神経障害性疼痛診療~」と題してご講演を賜りました。
変形性足関節症を考える上での下肢アライメントの重要性、また関節温存手術についてわかりやすくご解説いただきました。また日常診療でも活用できるレントゲン撮影方法を用いて、膝関節や股関節への影響についてもお示ししていただき、今後の診療に役立つ貴重な御講演でした。沢山の方にご参加いただき誠にありがとうございました。

2025年1月22日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2025年1月22日、名古屋整形外科セミナーを開催しました。

まず、中東遠総合医療センター 整形外科 医長 大島和馬先生から、講演「地域住民におけるびまん性特発性脊椎骨増殖症(DISH)の特徴」がありました。
DISHは1976年に定義された脊椎の強直をきたす病態で、軽微な転倒でも偽関節や脊髄損傷のリスクとなるほか、粗鬆骨であることも問題である。地域住民検診でDISHの特徴を調査した。DISHは高齢、男性、BMI高値が関連し、QOLの低下との関連があったほか、男性ではDISHとロコモの関連も認められた。

特別講演講師に大阪公立大学大学院医学研究科 整形外科学 教授 寺井秀富先生をお招きし、ご講演「脊椎疾患に伴う疼痛と手術治療戦略」を賜りました。
脊椎疾患の治療対象は、痛み、機能、形状である。痛みに着目すると、疾患によっては侵害受容性、神経障害性、痛覚変調性疼痛にまたがっている。骨粗鬆症性椎体骨折では、様々な病態があるためそれぞれに対する手術治療も様々存在する。まずは椎体形成術単独の適応を考え、順に検討する。前方固定は開創器の改良などによって近年手術侵襲が低減した。Revisionにimpaction bone graftingを応用する工夫も行っている。頚椎症性神経根症は典型的な神経障害性疼痛で、投薬はガイドラインを参考に行う。頚椎は腰椎と異なって椎間孔部に黄色靱帯が存在せず、手術時は注意が必要である。腰部脊柱管狭窄症では、静的圧迫×動的圧迫+炎症の結果が神経障害となると考えるとわかりやすく、静的圧迫または動的圧迫ゼロを目指す。BESS/UBEは視野がよく、また椎間関節温存に優れ、良好な成績が得られる。疼痛の原因を知って、必要最小限の手術を行うことが重要である。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。

2024年12月 合同カンファレンス報告

2024年12月19日(木)、合同カンファレンスをweb開催しました。

合同カンファレンス記録 (文責:山本浩登、岡田裕也)
日時:2024年12月19日(木)18:30~
場所:Web開催
司会:名古屋大学 浅井秀司 先生

症例1 TKA周囲骨折に対してnail plate combinationで固定を行った1例

岐阜県立多治見病院 服部修人 先生

症例は83歳女性、既往歴は関節リウマチ、両側TKA、受傷前のADLは施設入所中、歩行器歩行。転倒し左膝関節痛を認めた。Xp、CT検査の結果、TKA直上に骨折を認め、TKA周囲骨折Leiws-Rorabeck分類Type2、Su分類Type2と診断した。

症例2 骨盤輪骨折AO/OTA分類61B2とB3の診断に難渋した一例

名古屋医療センター 杉山珠里 先生

73歳男性。深夜に道路に倒れているところを発見され、転落または墜落外傷疑いで救急搬送された。当院初診時の身体所見では臀部・恥骨部の疼痛をみとめた。

症例3 転移性髄内腫瘍に対して免疫チェックポイント阻害薬が奏功した1例

名古屋大学医学部附属病院 藤井論 先生

転移性髄内腫瘍は稀な疾患であり、診断後は症状進行や予後不良が懸念される。今回、転移性髄内腫瘍摘出術後に免疫チェックポイント阻害薬による化学療法を施行し、経過が良好であった症例を経験した。

症例4 陳旧性/脆弱性アキレス腱断裂に対する Midsubstance Speedbridging法の使用経験

中津川市民病院 矢野心平 先生

Arthlex社のPARS(Percutaneous Achilles Repair System) は半経皮的にアキレス腱実質の健常部に人工靭帯をロッキングするデバイスである. 陳旧性/脆弱性アキレス腱断裂を認めた5症例に対し, PARSの人工靭帯を踵骨付着部にアンカー固定するMidsubstance Speedbridging法(以下, MS法)を施行し, 良好な短期成績を得た。

講演1 四肢軟部組織再建におけるOrthoplastic approach

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 澤田英良 先生

整形外科治療において形成外科の技術の併用が必要になる状況が多くあり、Orthoplastic approachとは整形外科医が形成外科分野の知識を習得する重要性について考えた分野である。組織の欠損が生じる状況は主に外傷、感染、阻血壊死、腫瘍であり、腫瘍は術前に形成外科医の介入が決定しているが外傷、感染、阻血壊死については緊急で整形外科医が対応する場合が多い。治療の際には患者要素、医療者要素、治療目標を加味した上で方針を決定する必要がある。

講演2 ハイブリッドOP室における脊椎手術支援ロボットナビゲーション導入とその活用

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 小林和克 先生

ハイブリッド手術室新設への背景として当院において手術件数も上昇傾向であったがCOVID19の流行前の時点で手術件数は頭打ちの状況であった。2019年に手術室造設プロジェクトが立ち上がりその際ハイブリッド手術室が併設されることになった。ハイブリッド手術室は心臓血管外科領域における低侵襲治療を契機に徐々に普及しつつある。

2024年12月13日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年12月13日、名古屋整形外科セミナーを開催しました。

まず、名城病院 整形外科・脊椎脊髄センター 整形外科医長 岩沢太司先生から、講演「当院における思春期特発性側弯に対しての加療方法 ~装具加療を中心に~」がありました。
構築性側弯症のうち最も多い思春期特発性側弯症のはっきりした原因はまだわかっていない。痛みのないバランスが取れた脊椎が治療のゴールである。手術も完全ではなく保存治療も重要。回旋矯正に主眼をおいたシェノー装具を用いている。服装の選択自由度が大きく、自分で着脱できる利点があり、満足度もよりよい。しかし身体的・精神的負担はあり、過剰治療の回避も重要である。

特別講演講師に獨協医科大学 整形外科 准教授 高畑雅彦先生をお招きし、ご講演「バリューベース・ケアという新たな視点から考える整形外科診療 ―脊柱靱帯骨化症患者の痛み、しびれへの取り組みから―」を賜りました。
環境の変化は新たな視点で新たなことに挑戦できる機会。EBMは医師主導的であるが、バリューベースドヘルスケアは患者中心の「患者が良かったと思える」医療を指す(海外では「掛けたお金に見合う治療だったか」という捉え方もある)。患者のニーズを把握するために、研究に患者や市民が参画するPPIが重要。後縦靱帯骨化症患者会に参加してもらった研究では、手術によって痛みやしびれが全く改善しない症例も多く、投薬によっても改善していない現実が浮き彫りになった。肥満と靱帯骨化症の関係では、近年縦断研究の結果が示されている。遺伝学的にも肥満と胸椎後縦靭帯骨化症の関連は深いことがわかった。また、アディポネクチンとレプチンの比が悪化することが骨化と関連している。肥満の治療が靱帯骨化症治療につながる可能性。肥満関連健康障害を抑制するためには3~5%の体重減少による代謝環境の改善が有効で、靱帯骨化症でも同様の効果が見込めないか研究中である。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。

2024年11月28日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年11月28日、ミッドランドホールにて名古屋整形外科セミナーを開催しました。

講師には札幌医科大学 整形外科学講座 准教授 江森誠人先生をお招きし、「痛みの軟部腫瘍 -神経障害性疼痛の対処と新規治療法の探索-」を御講演頂きました。
神経系腫瘍について基礎・臨床双方の立場からお話を頂き、大変深い知見を賜ることができました。

沢山の参加者の方にご参加頂き誠にありがとうございました。

2024年11月20日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年11月20日(水)、名古屋整形外科セミナーを開催しました。

まず、静岡厚生病院 整形外科部長 天野貴文先生から、講演「流行りでステムを選んでいませんか?-消えゆくステムに思いをはせて-」を承りました。人工股関節置換術におけるステムの近年のトレンドを世界のレジストリーデータからご講演頂きました。近年の傾向としてはTaper wedge、Full HA型ステムが世界的に人気でなっている一方で2000年初期に主流であったFit&FillやZweymüller型ステムは長期成績が良好にも関わらず、ほとんど現在は使用されなくなっています。その背景にはショートステム使用よる骨温存や手術アプローチによる影響が強いと考えられ、とても興味深いご講演を頂きました。

特別講演講師に北里大学整形外科学 医学教育研究開発センター 内山勝文教授をお招きし、ご講演「難治性人工関節手術に伴う合併症治療-神経障害性疼痛や感染を中心に-」を賜りました。人工股関節置換術後の感染は近年増加傾向にあり、多くの股関節外科医が感染治療に日々悩みながら治療を行っております。本講演では北里大学整形外科で行われている感染手術の一連の流れ、セメントモールド作成時の工夫など感染治療における多くのピットフォールをご教授頂きました。また近年話題となっているContinuous local antibiotics perfusion(CLAP)を内山先生はいち早く感染治療に取り入れて行っており、これまでの豊富な経験をご紹介いただきました。名古屋大学整形外科でも本年よりCLAPを使用した感染治療を行っており、本講演内容を今後の診療に行かせていけたらと考えます。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。

2024年11月15日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年11月15日、名古屋整形外科セミナーを開催しました。

まず、豊橋市民病院脊椎外科 副部長 宮入祐一先生から、講演「骨粗鬆症と隠れ椎体骨折 ~住民検診と地域医療機関の観点からの考察~」がありました。
50歳以降では、骨粗鬆症の可能性を考慮する必要がある。特に既存椎体骨折は骨密度によらずリスクを示している。地域住民検診において、隠れ椎体骨折と関連する独立因子は肥満であり、肥満による負荷や骨質への影響が推察される結果であった。筋力や骨密度には差がなかった。骨粗鬆症による病院通院者での調査では、隠れ椎体骨折をもつ患者は体重が軽く、骨密度が低値であった。地域住民の特徴を理解し、骨粗鬆症治療のタイミングを逃さないことが必要である。

特別講演講師に宮崎大学医学部整形外科 教授 亀井直輔先生をお招きし、ご講演「腰痛関連疾患と神経障害性疼痛」を賜りました。
世界には6億人を超える腰痛患者がいる。腰痛の原因は多岐にわたる。椎間板変性の定量評価は現在でも難しいが、脊髄組織の信号強度を基準としたsignal ratioで検討することが可能で、年齢やPfirrmann gradeとも相関する。Modic change type 1でも知られるT2高信号所見は、腰痛がある変性側弯患者に多く、圧痛部位とも概ね一致する。しかし、contrast ratioで確認した信号強度と腰痛との相関は乏しい。椎体間vacuumに骨セメントを注入する治療法では、経過に応じT2高信号も消失し、限局するT2高信号・腰痛の患者では限局した固定術が効果がある可能性がある。また、ゾレドロン酸やカルシトニンが腰痛の軽減とともにModic type 1を縮小するという報告もあり、骨代謝との関わりが示唆される。脊髄終糸症候群はまだ診断が難しく、電気生理学的検査も追加して検討。終糸症候群ではCMCTは延長せず、末梢潜時は延長する(係留症候群ではCMCT延長)。

今回も多数の先生方のご参加に深謝申し上げます。

受賞おめでとうございます

今シーズンも本学や関連病院の先生方が多数の賞をいただきました。おめでとうございます。

名古屋大学股関節班 大澤郁介先生 第35回大正AWARD最優秀賞(第51回日本股関節学会学術集会)

第51回日本股関節学会にて大変名誉ある第35回大正AWARDを授与頂きました。また名整会の同期(平成19年卒)で大親友の浜松医療センターの森田先生と一緒に受賞できたことはこの上ない喜びです。この賞を励みに今後も名古屋大学股関節班から世界に発信できるよう、臨床や研究に精進して参りたいと思います。
名古屋大学整形外科 大澤郁介

名古屋大学股関節班 田中真矢先生 44th SICOT Orthopaedic World Congress Best Young Investigator

このたび、9月25日から27日までセルビアのベオグラードで開催された44th SICOT Orthopaedic World Congressにて、Best Young Investigatorという40歳未満を対象とした賞を受賞致しました。竹上先生、大澤先生をはじめ股関節班の先生方のご指導によるものと、大変感謝しております。今回の受賞を励みにより一層臨床研究を進めていきます。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願いいたします。
名古屋大学整形外科 田中真矢

2024年10月23日 名古屋整形外科セミナーを開催しました

2024年10月23日(水)、名古屋整形外科セミナーを開催しました。

まず、安城更生病院 整形外科 小倉啓介先生から、講演「当院における頚椎患者適合型3Dガイドの治療成績」として、患者適合型ガイドを用いた脊椎手術の特徴についての講演がありました。

特別講演講師に日本大学病院整形外科 センター長 上井浩先生をお招きし、ご講演「神経障害性疼痛の診断と治療 ~転移性脊椎腫瘍の診断と治療戦略も含めて~」を賜りました。
鑑別診断ではピットフォールが重要。既往に注意し、安易に脆弱性椎体骨折と考えない。二次性骨粗鬆症や感染なども鑑別。Tokuhashi scoreなどの予後スケールや、SINS、ESCCスケールなどの画像診断で評価する。画像所見と神経学的所見は必ずしも一致せず、罹患高位によっても影響を受ける。転移性脊椎腫瘍の治療は、患者QOL向上、生命予後の改善など価値がある治療である。術式は様々あり、低侵襲手術の利点などがわかってきている。今後の展望として、新たな予後予測システムを構築中である。

多数の先生方にご参加いただきましたことに深謝申し上げます。